名護市長選「与党勝利」で沖縄の記者がいま最も懸念すること

秋の県知事選の行方も気になるけれど…
新垣 毅

ここで話を戻し、名護市長選の県知事選への影響を考えてみよう。北朝鮮情勢に対応する米軍ヘリ訓練激化を止められない構造と、構造的差別、これら二つの構造が変わらない限り、米軍絡みの事件事故は沖縄で起き続ける。そのこともあり、秋の県知事選の際は、どのような状況になっているか、見通しにくい要素がある。

その意味で、名護市長選は翁長知事の戦略に影響は与えても、投票結果を左右するかどうかは未知数だ。

というのも、名護市長選における出口調査では、翁長知事への支持率は低くない。知事を「支持する」は46・2%、「どちらかといえば支持する」は11・5%で、計57・7%は支持している。知事を「支持しない」は19・6%、「どちらかといえば支持しない」は11・2%で不支持は計30・8%だった。

選挙はその時の経済状況や候補者、政策、支援政党の態勢など多くの要素によって結果を左右する。県知事選では翁長氏の相手候補はまだ見えていない。

 

「うちなーんちゅ意識」の再生産

いずれにしても、沖縄人の「うちなーんちゅ」意識は潜在的に培養され続けている。なぜならヘリ事故などの構造、そして構造的差別という二重の差別構造が改善されていないからだ。このため、さまざまな局面で沖縄アイデンティティーは再生産されるだろう(詳しくは拙書『続沖縄の自己決定権 沖縄のアイデンティティー 「うちなーんちゅ」とは何者か』(高文研)参照)。

本土の沖縄ヘイトや、沖縄で起きている問題への無関心が助長されればされるほど、本土と沖縄の差別的歴史が想起され、やまとんちゅの無責任が可視化される。それに伴い、若い世代であっても、うちなーんちゅの自覚が生まれる機会が拡大する。いったい日本にとっての沖縄とは何なのか。うちなーんちゅとは何者なのか―。

構造的差別がなくならない限り、それらが永続的に主題化される。本土の国民はそこを深く考えて沖縄と向き合うべきだろう。今回の名護市長選の結果によって沖縄人の奥深い意識にあるものまで敗北したと見るのは誤りだ。

米軍絡みの事件事故が頻発し、政権が強硬姿勢を貫けば貫くほど、マグマのように歴史的に蓄積された「沖縄人(うちなーんちゅ)」という自己内部の存在が頭をもたげ、異議申し立ての主体として登場する機会は増えるだろう。

新垣毅(あらかき・つよし)1971年沖縄県那覇市生まれ。琉球大学、法政大学大学院を卒業後、琉球新報社入社。沖縄県政、中部支社報道部、社会部遊軍キャップ、編集員、社会部デスク、文化部記者兼編集委員などを経て、2016年4月より東京報道部長。沖縄の自己決定権を問う一連の報道で、2015年に第15回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞受賞。近著に『続 沖縄の自己決定権 沖縄のアイデンティティー』がある。