ゼロからわかるシリア情勢と米露「新冷戦」の危うい現在

アメリカがはまった袋小路
笠原 敏彦 プロフィール

長官はシリアをイランの「属国」とまで言い放っている。

一方で、シリアの和平については、国連主導の政治プロセスで解決し、アサド大統領を排除した「統一シリア」を目指すと述べるに止まり、全く筋道を示せないのが実情である。

アメリカは内戦当初、シリアへの地上部隊派遣を否定していたが、オバマ前政権の2015年秋に特殊部隊50人を派遣したのを皮切りに徐々に拡大。今や、米軍のシリア駐留は明確なゴール設定もなきまま、長期化が必至の情勢となっている。

米ロ「新冷戦」のシワ寄せは?

シリア内戦をめぐっては、アメリカとロシアの代理戦争の様相を呈し、両国が主導権争いをするような時期もあった。

しかし、オバマ政権はアサド政権の化学兵器使用への軍事制裁を見送るなど「世界の警察官ではない」という姿勢を強めた。

その「力の空白」を突くかのようにプーチン大統領が2015年にアサド政権擁護の姿勢を明確にして参戦。その結果、ロシアがシリア問題でのイニシアチブを握ったという経緯がある。

アメリカはシリアにおいてロシアに外交的敗北を喫したのである。

シリア和平に向けては、ロシアがトルコ、イランを巻き込んで協議の場を設けるなど外交攻勢を仕掛けている。

ロシアは自らに有利な状況を作った上で、国連のジュネーブ・プロセスに持ち込みたい思惑のようだ。

プーチン大統領は、アサド大統領を説得し、シリアを連邦制に近い政体へ移行させることで政治的決着を図りたい意向だとの報道もある。

しかし、国連の推定で2500憶ドルともされる巨額の復興資金は欧米諸国などに頼らざるを得ないのが実情であり、アサド大統領が政権に居座る限り、欧米諸国には受け入れがたいだろう。

トランプ政権は2月2日、新たな「核態勢の見直し(NPR)」を発表し、ロシアへの対抗意識をむき出しにした。

「新冷戦」が実態を伴い始める中、米ロ両国がシリア問題で協調する余地が益々狭まっていくとしたら、そのシワ寄せがいくのはシリアの人々である。

このコラム欄でも何度か指摘したが、アメリカ一国に多大な責任を押し付けるのはフェアではないだろう。

しかし、必要のない戦争だったイラク戦争を強引に推し進めて中東を大混乱に陥れながら、超大国のリーダーシップが必要とされるときに、その存在感が見えないアメリカの外交・安保政策はどう評価されるべきなのか。

中東の人々にとって、「アメリカ第一主義」の景況で悦に入っているアメリカの姿はどう映るのだろうか。

同盟国の日本にとっても、その評価は決して他人事ではないだろう。

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