あなたをアップグレードするための「12の哲学最新ワード」教えます

効果的な利他主義ってわかりますか?
小川 仁志 プロフィール

たとえば、『公共哲学』という名の本がアメリカのジャーナリスト、ウォルター・リップマンの手によって出版された1955年を起源とすることもできるだろう。

あるいは、学問としての公共哲学の祖とされるドイツ出身の女性現代思想家ハンナ・アーレントや、同じくドイツの哲学者ユルゲン・ハーバーマスが公共性をめぐって本格的な哲学の議論を始めたのも、やはり20世紀の半ばである。

以後、政治を対象とした政治哲学の領域ともオーバーラップしながら、公共哲学はより広い射程を視野に入れ、公共にかかわるあらゆる問題を対象として扱ってきた。日本においてそれが東京大学出版会の叢書として一定の成果にまとめられたのは、2000年代初頭になってからである。

このように学問としての公共哲学の歴史は短いものの、それでも半世紀以上にわたる議論の中で様々な理論が提起され、すでにこの学問が何を指すのかについて、一定のコンセンサスを見出すのは不可能な状態にあるといってよい。

そこで『哲学の最新キーワードを読む』では、いずれの議論にも当てはまりうる最も重要な要素に焦点を当てたい。これを理解していただくには、その部分だけで十分である。それが先ほど記した、自分つまり「私」と社会をいかにつなぐかを考察する学問という定義にほかならない。

 

理性そのものをアップグレードする

この定義であれば、政治を対象にしようが、科学技術を対象にしようが、なんでも当てはまるはずである。こうして公共哲学の専門家たちは、これまで自分が社会にどうかかわり、どう社会を変えていけばいいのか議論してきたわけである。

ところが、今この定義をも揺さぶりかねない大きな問題が生じているのである。

理性的存在である「私」は、かつて意のままに社会をコントロールできた。しかしそのような牧歌的な時代は終わりを告げたのである。感情、モノ、テクノロジー、共同性という非理性的な力が「私」の頭上を越えて、いや「私」を排除して、ダイレクトに社会に影響を及ぼそうとしているのだ。

この状態を放置しておけば、やがて「私」は不必要な存在となり、この世は非理性によって支配される混沌としたものへと変貌してしまうであろう。その悲劇を防ぐための方策はおそらく一つだ。

新たに生起する様々な非理性と、従来の理性との関係を定義し直すことで、理性そのものをアップグレードすること──それこそが〈多項知〉の時代に求められる新たな公共哲学なのである。

つまり、『哲学の最新キーワードを読む』を読むことで、新たな知と思考が身につき、読者自身が自らの理性をアップグレードすることが可能になる。これによって、時代を乗り切る、いや時代を切り拓くための指針と自信を手にできるであろう。

繰り返すが、公共哲学というのは、「私」と社会をいかにつなぐかを考えるための学問である。その「私」をアップグレードするということは、ひいては社会自体をアップグレードすることにもつながってくる。

Photo by iStock

具体的には、〈多項知〉を自らに取り込むことこそが、アップグレードの意味するところである。感情を豊かにし、モノを主体にした新しい思想を理解し、テクノロジーのもたらす未来を正確に把握し、共同性の広がりを視野に入れる。そのうえで理性を働かせるのだ。

もちろんそれは、口でいうほど簡単なことではない。

そこで『哲学の最新キーワードを読む』では、誰でも理性をアップグレードできるよう、必ずしも哲学やテクノロジーに詳しくなくても理解可能な記述を心がけている。これにより、若い世代から年配の方まで、幅広い世代に読んでいただけるものと確信している。