成田空港で国歌斉唱した中国人を中国が「病的」と突き放したワケ

「被害妄想は笑われる」と一刀両断
古畑 康雄 プロフィール

「大国として恥ずかしい」の意識が芽生えた

今回の外交当局や政府系メディアの批判が、日本との関係を悪くしたくないというご都合主義から発したものとは言えないだろう。

ある在日中国人は「海外の華人が長期間国外で生活すると、国外の法律、文化、地元の人のやり方、考え方を深く知るようになり、その結果摩擦や誤解を取り除くことができる。そして冷静で客観的、成熟したやり方で問題を見ることができるようになる」と語っている。

海外に旅行、生活する人が増えたことで、相手国の事情への理解も深まり、心の中にこの程度のことで国を持ち出して騒ぐのは大国として恥ずかしいという気持ちが生まれてきたのだろう。

 

今回の事件を受け、中国側も航空会社の遅延などのトラブルにどう対応するか、詳しく報じるようになった。大手ポータルサイト、騰訊網は27日「天候が原因で搭乗便が取り消しになった時、LCCは無料の宿泊や飲食を提供する必要があるか?」という解説記事を掲載した。

この中でジェットスターの規定では、天候など不可抗力の理由で搭乗便に遅れや欠航が発生した場合、次の便を案内するか、キャンセルに応じるかのどちらかであり、航空連合(スターアライアンスなど)に属していないLCCは他社への変更はほぼ不可能としている。

そしてLCCはもちろんのこと、フルサービスキャリア(FSC)ですら、無料の宿泊の提供などはしないとして、キャセイ、全日空、日本航空などの規定を掲載している。

ただ同記事は、LCCが運営コストや航空券が安いからと言って、そのサービスまで低レベルでよいということではないと指摘。特に今回の場合、目的地が中国の国際線で、大部分の乗客が中国人だったのに、中国語のできるスタッフを配置せず、乗客とのコミュニケーションが不十分だった結果、乗客が激昂したとして、サービス面に失態があったと指摘した。

この指摘についてはその通りだ。中国人乗客にも行き過ぎはあったが、今回の問題を一部の中国人が無理難題をふっかけたと片付けるのもまた早計だ。確かに、乗客のほとんどが中国人なのに、中国語のできる地上スタッフがいなかったのだとすれば、誤解からトラブルを生みやすい。航空会社に十分なスタッフがいない場合は、空港が用意すべきだろう。

海外の空港でのトラブルは筆者も経験がある。

10年ほど前、北京から上海に向かう便が上海空港の悪天候により2度も引き返したため、乗客が怒りだし、次々と飛行機から下り始めた。自分も一緒になって下りたのだが、乗客で混乱するカウンターで預けた荷物をどうやって取り戻すか、そして次の便をどうやって予約するか、途方に暮れていたところ、たまたま帰国中だった中国人の同僚が空港まで来てくれ、何とかその日の深夜に上海に着くことができた。

月並みな言い方になるが、「おもてなし」の気持ちを持って乗客とのトラブルを極力なくすよう努力することが、「やはり日本のサービスは違う」として中国に限らず外国からのリピーターを増やすことにつながる。空港で国歌を歌うのは恥ずかしいと多くの中国人も感じるようになったのと同時に、もてなす我々の側もそのような事態を招かない工夫が必要と言えるだろう。