成田空港で国歌斉唱した中国人を中国が「病的」と突き放したワケ

「被害妄想は笑われる」と一刀両断
古畑 康雄 プロフィール

政府系メディアまで中国人客を非難

ただ事実関係については、後に中国紙「環球時報」の記者がジェットスターに取材をしている。これによれば、成田空港のターミナル(LCC用の第3ターミナル)は24時間利用可だが、出発ゲートは夜間閉鎖するので立ち去るよう求めたが、中国人側は拒否、これがトラブルの原因になったという。

だが、従来であれば日本批判の大合唱で終わるところが、今回は中国人乗客の対応への批判が中国のネットやメディアで次々と現れた。

ある在日華人の微信は26日、事件に関する中国大使館の声明を転載し、日本人は(航空会社が優先的な扱いをしたのではなく)飛行機が出発しないので自ら帰ったこと、そしてLCCは遅延の場合でも宿舎や食事の手配などをしないと契約に明記してあると指摘、「日本」という2文字を取れば、単なる維権(自らの権利を守る)事件にすぎないとした。

 

特に大きな議論を呼んだのは中国人が抗議のために国歌を歌ったことだった。

環球時報は同日、中国外務省領事保護センター参事官の趙岩氏にインタビュー、「これは乗客と航空会社の間の普通のトラブルであり、このような具体的な状況で、集団で国歌を歌うことで問題を解決しようとするのは明らかに不適切であり、民族感情の対立を容易に招き、矛盾を激化させる。もし日本の乗客が航空会社とのトラブルで北京の空港で日本の国歌を歌ったら、中国の民衆は不愉快に思うだろう。『己の欲せざる所は人に施すなかれ』だ」と、タカ派で知られる同紙としては異例ともいえる警告を発した。

そして海外で思わぬ事態に遭遇することはごく当たり前のことだとし、突き放したような言い方で締めくくった。

「何から何まで政府に頼ることはできないということを肝に銘じておくべきだ」

さらに国営メディアの中国中央テレビのウェブサイト「央視網」も27日、「個人の権利擁護と国家の尊厳を結びつけるな」との辛口のコラムを掲載した。

この中では「中国の乗客が海外の航空便で冷遇されたり馬鹿にされたりしたことは2017年、少ないとは言えなかったが、それだからといって『被害妄想症』になってはいけない」と述べ、「集団で対抗し、さらには国歌を歌って衝突をエスカレートさせ、愛国の感情を巻き込んで民事トラブルを解決しようとするのは、愛国の感情を踏みにじるものだ。はっきり言ってこれは全国人民の感情を虜にして個人的な怨みを解決しようとする、利益に目がくらんだ病気だ」とまで言い切った。

そして「愛国の情熱はたやすく引火するが、真の愛国は理性的、客観的だ。もし飛行機に乗るたびに国家利益を虜にして個人の怨みを晴らそうとするなら、全世界は連日砲火が絶えないだろう。

真に国を愛するなら、大使館を『託児所』にせず(大使館が乗客のおしめの世話などをしたことを指しているとみられる)、国歌や国旗を個人の要求を満たすための神器にしてはならない。国に迷惑をもたらさず、同胞の顔に泥を塗らない、これこそが心から祖国を思う気持ちと言えるだろう」とした。

中国メディアの報道によれば、観光客が空港でのトラブルで国歌を歌ったのはこれが初めてではない。2015年9月4日にも、飛行機の遅れに不満をもった中国人客がタイの首都、バンコクの空港で国歌を歌い抗議したという。

だがこの時も、ネットでは批判が出ていた。

ある文章は「バンコクの空港で国歌を歌った行動は、豊かになったと感じているが心の中の仮想敵を捨てきれない一部の中国人の典型的な心理状態を表しており、コンプレックスが自尊心へと転換する過程で生じた、抑えきれない感情の膨張だ」

「彼らの一部はこのような歪んだ心理状態と中国の発展を結びつけて、国外に出るやいなや、金持ちぶることができないとすぐに人から馬鹿にされていると思い込む。そしていったん利益を巡るトラブルが起きると、相手が自分や中国に対して攻撃してきていると感じる。このような虚妄の自尊心は、横暴な衝動により内心の弱さやコンプレックスを隠そうとするもので、人々の笑い話となり、国民のメンツをつぶすのだ」と論じている。