日本人だけが知らない「食用卵」のアブない実態

ヨーロッパならほとんど「違法レベル」
岡田 千尋 プロフィール

砂浴びができないから殺虫剤

ケージの中で鶏を飼育するということは、鶏たちの本来の免疫機能や健康管理の機能を利用しないということだ。

鶏たちは自分たちで健康を管理する方法をよく知っている。植物だけでなく、虫を自分で取って食べるし、ミネラルを含む土を食べる。1日1万回以上、地面をくちばしで突き、足で穴を掘り、ちょこちょことよく動く。

こうして運動して太陽を浴びている鶏の骨は強い。対照的に、ケージ飼育の鶏は、放牧(屋内・屋外を自由に行き来できる飼育方法)の鶏と比べて骨の厚みが2分の1から3分の1しかない。

鶏は砂浴びをしてダニや寄生虫や、体についた汚れを落とす。太陽の光を浴びて殺菌し、心の健康も保つ。太陽の下で砂浴びをする時間は至福の時間だ。ぐるぐる、キューとのどを鳴らしながら砂を体中に振りかける。

これらができないケージ飼育の鶏はどうやって健康を保つのか。

 

まず鶏の寿命は10年ほどだと言われるが、採卵鶏は雛の時期120日と、産卵期間1年または2年で殺されているので、この短い期間をなんとか生き延びればよいという前提がある。

生まれてすぐにあらゆる種類のワクチンが打たれる。その数25種類ほど。雛の間は抗生物質、合成抗菌剤も主に飼料添加物として投与される。2015年は16種類1の抗生物質、合成抗菌剤が使用されている。このワクチンと抗菌剤がなければとても生き残れないのだろう。

さらに、砂浴びで寄生虫を落とすことができないため、月に一度、殺虫剤を体中に噴射され、びしょ濡れになる。体が冷えるし、ショックで死んでしまう鶏もいる。殺虫剤がかかった卵を出荷する農家もある。

いくらなんでも卵を産ませすぎ

ケージ飼育の鶏の骨が弱いのには、本来年間20個程度しか卵を産まない鶏を、品種改変で300個も産むようにしてしまったことも大きい。

自分の体中からカルシウムを奪いながら卵を産み、卵管も卵巣もぼろぼろになっていく。

私達が保護した鶏を見てくれた獣医師は、大学時代、屠殺される前の150羽ほどの採卵鶏(廃鶏)を解剖したことがある。

そのうち約9割は卵巣か卵管に疾患があり、卵詰まりを起こしたり、卵巣嚢腫の状態になったり、卵管に腺がんがあった鶏もいたという。

「鶏が卵を産むことは当然」と思うかもしれないが、彼女たちは人間に与えるための卵を産んでいるわけでも、簡単に産み落としているわけでもない。彼女たちは”子供”を産んでいるのだということを覚えておいてほしい。