本当に「地方活性化の鍵」なのか?「インスタ映え」のダークサイド

目的と手段の逆転が起きると…
岡本 亮輔 プロフィール

インスタ映えとSNSが地名を変えた?

しかし、現在では、写真撮影それ自体の目的化はさらに深まっている。

J・アーリとJ・ラースンは、『観光のまなざし』の中で、知的水準の高い観光客グループの例を挙げている。

彼らは、バリ島の宗教儀礼の見学に訪れたのだが、ほとんど時間が経たないうちに、次の観光地に行きたいとガイドに言い出した。なぜかというと、写真撮影が済んだからである。

アーリらは、この例を「体験を拒絶する写真」と呼び、「カメラと画像は観光者のものの見方を簡略化し機械的にした」としている。こうした状況はさらに深まっているだろう。

現在では、写真映りだけで観光地として売り出される場所が出てきているし、そもそもその場所を訪れるかどうかという行き先選択に関わるようになっているのである。

たとえば、千葉県君津市に「濃溝の滝」と呼ばれる場所がある。

江戸時代、水田に水を通すために掘られた洞窟であるが、光が差し込んだ美しい写真がネット上で拡散し、人気スポットになった。

濃溝の滝

しかし、この洞窟は、本当は濃溝の滝ではない。「亀岩の洞窟」が正しい名称である。本物の濃溝の滝はもう少し下流にある。

さらに、農業用水の確保のために作られた洞窟なので、本来は「農」溝の滝という名前だったが、いつの間にかサンズイがついて拡散したのだ。

 

今さら正式名称に訂正するのは難しく、今でも亀岩の洞窟に行くための駐車場に「濃溝の滝」という看板がある。

インスタ映えとSNSが由来のある地名を変えてしまった例である。