本当に「地方活性化の鍵」なのか?「インスタ映え」のダークサイド

目的と手段の逆転が起きると…
岡本 亮輔 プロフィール

外国人も大好き「千本鳥居」

リストアップされた場所の多くは、従来から自然景観・文化景観で有名なところだったが、その中に、ほとんど無名であった元乃隅稲成神社が選ばれたのである。

31箇所のうち、神社仏閣は6つ選ばれているが、他5つは厳島神社、毛越寺、宇佐神宮、金閣寺、那智の滝である。

世界遺産級のリストの中に、地元の漁師が夢を見たのをきっかけに戦後になって創られた小さな神社が含まれたのだ。

理由は明らかだ。

1987年から寄贈されるようになった鳥居で構成される千本鳥居と波が打ち寄せる岩場が作り出す景観である。

千本鳥居は日本ではそれほど珍しくないが、CNNの外国人記者には珍しく映ったのだろう。今では、市が発行する観光ガイドの表紙にも採用されている(http://bit.ly/2BOUmYD)。

筆者は「元乃隅稲成神社の景観は美しくない」と言いたいわけではない。観光客目線で発見されたものが、その場所の意味や価値のすべてであるかのように受容される過程に疑問を抱いているのである。

元乃隅稲成神社と同じようなことは、他にも起きている。

 

外国人観光客が京都で行きたい場所は、ここ数年、連続して伏見稲荷大社が1位となっている。理由は明白で、千本鳥居の写真映えである。

同社には、今では「外国人に人気の観光スポット 第一位」といったのぼりが立てられている。

しかし、言うまでもなく同社は全国にあるお稲荷さんの総本社である。こののぼりは不要ではないだろうか。

伏見稲荷大社の千本鳥居〔PHOTO〕gettyimages

かつて国際列車に「写真車」があった

写真と観光の結びつき自体はまったく新しくない。戦前から日本でも写真は観光に利用されてきた。

当時も、外国人観光客の誘致は外貨獲得のために重要であり、政府や鉄道省が中心となって様々な戦略をとった。そして、その中でも写真や映像は、有力な宣伝手段として重視されてきた。

米国独立150周年記念万国博覧会(1926年、フィラデルフィア)では、日本各地の風景や民俗を映像で宣伝したし、鉄道省は一貫して各地の名勝の写真を収集して、観光誘致に利用している。

1931年には、欧米からの観光客を増やすために、鉄道省観光局が「冬の日本」の写真を公募した。まさに今でいうインバウンド活性化戦略だ。

その結果、1等は「鎌倉大仏」、2等は「日光の陽明門」、3等が「雪国の風俗」となっており、いかにもインスタ映えしそうである。

さらに同年には、外国人観光客向けの国際列車に「写真車」が設けられた。外国人観光客が長い旅路を経て帰国してからでないとどのような写真が撮れたかわからないという問題を解決するために、列車内で現像作業できるようにしたのである。

当時から旅先での写真撮影が重要だったことがうかがえる。