最近、地上波放送vs.ネット動画という議論がよくされますが、個人的にはネット動画に、地上波の視聴者を取られている認識はまったくありません。
今後はスマホやネットで見られてきた動画が、テレビ画面でも見られるようになっていくことが考えられます。つまり、地上波の番組もネット番組も、横並びで表示されるようになる。
結局は、どちらのコンテンツが面白いかだけの話。そこで、地上波vs.ネットの議論は意味をなしません。
「AbemaTV」(サイバーエージェントとテレビ朝日が手がけるネットTV)より面白い番組を作れば、視聴者は地上波を見てくれる。
いまは追尾型のドローンがあるのですが、それからひたすら逃げる番組なんて面白そうじゃないですか。欧米ではすでにスマホで番組を撮影したりもしています。
今も昔も、そしてこれからも、テレビに求められるものは、やはりコンテンツの面白さなんです。じゃあどうやって面白い番組を作るか。
そのためには、いまのテレビマンが面白いと思うことを、一回ぜんぶ無視してみる。そうやって、ありえなかったものを「あり」にしていく。そうしないと、もう一度テレビが注目されるような時代はこないと思うんですよ。
あと面白いものを作るため、あえて僕は制作チームに、優秀だけど自分とは合わないスタッフを入れるようにしています。そのほうが「面白くない」とはっきりと指摘してくれますから。
テレビ業界で「忖度」なんて禁止ですよ。言うべきことを言わないと、いい番組なんてできるわけがない。
じつは僕、あんまりテレビを見ないんです。もちろん仕事では見ますけど、特に参考にしている番組もありません。この適度な距離感こそが、もしかして良いのかもしれません。
テレビの人って、クリエイター意識が強い傾向がありますが、どうも違和感があるんです。「どうだ、面白いだろ」と言われても、それがこれからもずっと面白いとは限りません。
『池の水』だって最初から、世のため人のため、地球環境のためを目的にしていたら、ここまでになっていなかったと思います。「ただ池の水を抜くだけで番組が成立するのか」という「不安」が視聴者の関心を引きつけたのでしょう。
誰もわからないことを、ありのままに伝える。素直さと勇気がこれからのテレビに求められていると思うんです。