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決算資料が教える「まるで不動産屋のTBS」「老人ホーム運営フジ」

これがキー局本当の実力か

いったい何の会社なの?

大阪・西梅田エリアのビジネス街を歩くと、周囲から一際高くそびえ立つビルが目に入る。地上34階、ガラス張りの先進的なデザインが目を引く複合高層ビル『ブリーゼタワー』である。

大阪駅、北新地駅に直結する好立地から、中層から高層階には、日本ハム、ANAセールスなど日本を代表する有名企業のオフィスが数多く入居。

低層階の商業施設『ブリーゼブリーゼ』は、「リストランテ・ヒロ」などのグルメ店や人気アパレルショップでテナントが埋め尽くされ、ショッピング客で賑わう。

昨年には『よしもと西梅田劇場』ができて盛り上がりを見せる西梅田エリアのランドマーク的存在といえるが、この『ブリーゼタワー』があのフジテレビを抱えるフジ・メディア・ホールディングス(HD)の貴重な「収益源」であることを知る人は少ない――。

フジテレビといえば、いまや視聴率で民放4位が定位置の「負け組」テレビ局。'17年4-9月期決算では民放5局で唯一の営業赤字に転落し、かつて12年連続で視聴率トップに立った面影はもはやない。

にもかかわらず、この会社がいまだ年収1000万円を超える高給社員をたくさん抱えていられるのはなぜか。そんな素朴な疑問に答えてくれるのが、この「ビル」なのである。

フジ・メディアHDの決算書を見るとそのことがよくわかるので、順を追って説明しよう。

'17年3月期を例に取れば、まずフジ・メディアHDが1年間で稼ぎ出した営業利益は223億1900万円。そのうち、テレビCMなど広告収入を柱とする「放送事業」で稼いだ分は68億3000万円だ。

テレビ局の経営といえばCMこそが一番の稼ぎ頭だと思っている人は多いだろうが、フジ・メディアHDの場合は全体の3割ほどということになる。

しかも、この「放送事業」の利益には、フジテレビだけではなく、BSのビーエスフジ、ラジオのニッポン放送が稼いだ広告収入なども含まれているので、純粋にフジテレビの利益分だけを抜き出すと40億2700万円。

つまり、テレビ事業は全社の18%分しか稼いでいない。

「5年前の'12年3月期には、会社全体332億円の営業利益のうちフジテレビだけで250億円(全体の約75%分)を稼いでいて、フジ・メディアHDは文字通り『テレビの会社』だった。

それが視聴率の低迷に合わせるようにフジテレビ本体の利益減が始まり、'15年3月期には会社全体の利益のうちフジテレビが稼ぐ分は41%と『5割切り』をした。

フジテレビの不調は年々深刻化し、'16年3月期には全体の利益の『4分の1』も稼げなくなり、業界関係者に衝撃が走った」(経済ジャーナリストの鷲尾香一氏)

 

それが'17年3月期には2割を下回るまでになっているわけだが、そんな絶不調のテレビ事業に代わって、いま会社の利益を支えているのが「都市開発事業」なるもの。

'17年3月期には約110億円の営業利益を上げ、会社全体の利益の約半分を支えている文字通りの「稼ぎ頭」である。

その「都市開発事業」の中核を担っているのがサンケイビル。まさしく冒頭の『ブリーゼタワー』を手掛ける会社である。

「サンケイビルは『S-GATE』ブランドを中心とした賃貸オフィスビルから、『ルフォン』ブランドのマンション、『ウェルケア』ブランドの老人ホームまで手掛ける総合中堅デベロッパー。

都市開発事業の営業利益約110億円のうちサンケイビル分は86億2500万円。比較するとフジテレビの2倍超を稼いでいる計算になる。昨年度は売上高、営業利益ともに過去最高を更新するほど、経営も絶好調です」(元日本総研メディア研究センター所長でオフィスN代表の西正氏)

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もはやフジ・メディアHDはこの会社なくしては成り立たないほどの存在になっているわけだが、そんなサンケイビルと並んで、「都市開発事業」を支えているグランビスタホテル&リゾートなる会社もある。

昨年度の営業利益約20億円はビーエスフジとほぼ同水準と言えば、その存在感の大きさがわかるだろう。

グランビスタホテル&リゾートは全国の名門ホテルや観光施設を保有・運営しており、千葉県の水族館『鴨川シーワールド』もその一つ。

ゴルフ場や高速道路のサービスエリア内のレストランなども幅広く手掛けていて、訪日観光客需要をうまく取り入れて稼いでいる。

「将来的にはその観光ビジネスのノウハウを生かして、フジ・メディアHDのなかでカジノなどのIR(統合型リゾート)事業を担うことも期待されている」(次世代メディア研究所代表の鈴木祐司氏)

要するに、テレビではなくて不動産が「本業」――。これがフジ・メディアHDの偽らざる姿なのである。