手厚いサポートと、給与への不満

オランダの教師が日本の小学校教師と比べて柔軟な働き方ができるのは、パートタイムが認められているからというだけではない。

実は、オランダの小学校の教師には年500ユーロ(2018年1月現在約6万7千600円)の研修予算が政府から支給される。どんな研修を受けるかは、教師自身の判断に任されているという。そして小学校単位で年7日まで「教師の研修のための休日」(Studiedag)を設けても良いと政府が承認しているのだ。

教師へのサポートは手厚く見えるが、その一方で長時間労働と低賃金に対する教師自身の不満は根強い。政府の規定では、週5日フルタイムの教師は1,659時間(週41.5時間)働く計算になる。けれど実質は平均46.9時間/週だけ働いているのだという。ただしオランダの学校には日本のクラブ活動顧問にあたるような業務が存在しないので、業務はあくまでも授業やクラスの雑務に限られている。

OECDの調査を参照すると、オランダの初等教育の教師は中等教育の教師の給与の約79%しかもらっていないという計算ができる。そういう不均衡にも不満があり、2017年は初等教育の教師たちのストライキが計3回決行された。そのうちの1回は始業を1時間を遅らせただけだったが、残りの2回はほぼオランダ全土の小学校が休校になり、教師たちは官庁街のデンハーグでデモを行った。

けれどストライキでの休校は決して教師たちのわがままでも怠慢でもなく、教師という職業に誇りをもって当たっているからこそ生じるアクションなのだ。そして、不満を堂々とストライキという形で表明できるオランダの教師の自由度も、公務員のストライキが禁止される日本で生まれ育った筆者の目にはまぶしく映る。

筆者の娘の小学校では、登校時も下校時も先生との握手やハイタッチで挨拶する。写真/倉田直子

国の未来を担う子供たちを導く教師は大事な仕事。ぜひオランダの初等教育教師には望む待遇になっていってほしいし、日本でも教師の長時間労働やマルチタスクなどはぜひ見直されていってほしい。子供たちの学ぶ時代を素晴らしい時間にするためには、個人の頑張りに負うのではなく、国や制度で教師を支えていく必要があるからだ。その際は、ぜひとも日本にも複数担任制を検討してもらいたいと感じる。教師の過度な負担減や幸せは、子供たちの幸せにもつながるだろう

そして次回は、オランダの小学校の生徒たちはどのような「学習指導要領」によって導かれているのか書いていきたい。そこには、まさに「教育の自由」を憲法で保障された国ならではの「学びの姿」を垣間見ることができる。

倉田さんがリポートする「オランダが世界一の教育と呼ばれる理由」シリーズ第一回「教育費無償」についてのリポートはこちらhttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/53895
第二回「飛び級や留年が当たり前の教育」についてはこちらhttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/54163