作家・橘玲「ドフトエフスキーから始まった僕の読書人生」

わが人生最高の10冊

2000年代には、学問の世界で大きな変化が起きていることが知られるようになりました。僕はそれを「知のパラダイム転換」と呼び、『「読まなくてもいい本」の読書案内』という本で書いています。

自然科学が人文系の領域を浸食しているのですが、『利己的な遺伝子』と『人間の本性を考える』はその流れの象徴的な2冊といえます。

今回の10冊は高校時代から時系列で印象的だった本を挙げました。編集者時代に高名な学者先生と話すとき、わからないなりに読んでいた本の話題でもりあがったこともあります。

その時代を回想した『80's(エイティーズ)』でも書きましたが、本を読むことで人生は大きく変わったとあらためて思います。(取材・文/佐藤太志)

▼最近読んだ一冊

「カリスマ投資家が行った、20歳未満の20人に、一流大学をドロップアウトすることを条件とした奨学金プログラムが題材。『知』を至上とする、シリコンバレーの特殊で奇妙な文化がこの奨学金に象徴されていて興味深い」

橘玲さんのベスト10冊

第1位『罪と罰』上・下
ドストエフスキー著 工藤精一郎訳 新潮文庫 各790円
「ドストエフスキーにはハマると抜けられなくなる魔力がある。原文で読むのは入学して半年間は頑張りました(笑)」

第2位『仮面の告白
三島由紀夫著 新潮文庫 520円
「こちらも高校時代に衝撃を受けた作品。自分のことをここまで思想の問題として明晰に言語化できるのかと驚いた」

第3位『1973年のピンボール
村上春樹著 講談社文庫 410円
「僕を含め同時代の若者のカルチャーが反映されていた風俗小説でもあり、思い出深い一冊。新鮮な文体も印象的」

第4位『新装版 コインロッカー・ベイビーズ
村上龍著 講談社文庫 890円
「著者の才能に驚愕した一作。この世界観は『AKIRA』などの作品に影響を与えたと思う」

 

第5位『長いお別れ
レイモンド・チャンドラー著 清水俊二訳 ハヤカワ文庫 1000円
「最も印象に残っているハードボイルドの一つ。ロバート・アルトマン監督の映画も良い」

第6位『八百万の死にざま
ローレンス・ブロック著 田口俊樹訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1040円
「ブロックの作品は好きでたくさん読んでいますが、これがベスト。都会に生きる人に響く」

第7位『深夜特急』1~6
沢木耕太郎著 新潮文庫 460円(1巻)
「バックパッカーものとして定番中の定番。旅行が大好きな自分にとって外せない作品です」

第8位『シャンタラム』上・中・下
グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ著 田口俊樹訳 新潮文庫 990円(上巻)
「ムンバイのスラムを舞台に繰り広げられる冒険の数々。『これ事実なの?』と感じるほど」

第9位『利己的な遺伝子〈増補新装版〉
リチャード・ドーキンス著 日高敏隆、岸由二、羽田節子、垂水雄二訳 紀伊國屋書店 2800円
遺伝子のアルゴリズムという観点から生命と進化は説明できる、と述べた衝撃の一冊

第10位『人間の本性を考える』上・中・下
スティーブン・ピンカー著 山下篤子訳 NHKブックス 1120円(上巻)
進化はヒトの心や行動にも大きな影響を及ぼしているという現代のタブーに挑む

『週刊現代』2018年2月10日号より