ワイドショーはいつから力の弱いタレントばかり叩くようになったのか

芸能プロとテレビ局「愛憎の50年史」
田崎 健太 プロフィール

「ハワイ取材」の終焉

この頃以降、有力芸能プロダクションが、タレントを守るという名目で中小プロダクションからの“移籍”を受け入れたり、それらを“系列プロダクション化”することも珍しくなくなった。

前出のキー局プロデューサーは、2000年代に入って芸能ニュースのあり方が根本的に変わったという。

 

「例えば、昔は芸能人はハワイで正月を過ごして、それをテレビに撮られるのがステイタスだった。でも、ある時期から視聴者がそれに興味を失ったし、芸能人の側も『そんなもの、撮られてもどうってことない』っていう感性になってきた。時代は変わった、と思ったね」

そして、手練れの芸能レポーターの「見せ場」である記者会見も減った。

「結婚や離婚も、昔は会見を開いて大騒ぎだったのが、今はブログでいきなり報告して、ファックス1枚送られてきて終わり。だから本来は、(発表を)出す前に捕まえてコメントを取らなきゃいけないんだけれど、それが出来る記者はテレビ業界にはもうほとんどいませんよ」

現場のスタッフがあるタレントのスキャンダルを掴んだとしても、そのタレントと同じプロダクションに所属する俳優が自局の看板ドラマに出演している場合は、編成局の指示で取り上げることが出来ない。

こうして、ワイドショーは芸能ニュースの色合いを薄め、総合情報番組となった(一方、報道番組も芸能ニュース、グルメ、生活情報を取り入れた)。かつてはニュースキャスターやアナウンサー、ジャーナリストが司会やコメンテーターを務めていたが、番組によってはタレントが多用されることもある。当然、彼らに関わるネタも握りつぶされることになる。

自らも「時代の進歩」に敗れた

そして、前田を含める関係者が口を揃えるのが、2009年のリーマンショックによる経費削減の影響である。

現場での取材は経費がかさむものだ。前出と別のキー局プロデューサーはこう言う。

「かつては、たった1分1秒の画を撮るために芸能人の潜伏先に出張して、まる一週間張り込むなんてこともありました。でも今は、そんな取材は絶対に出来ません」

人件費、制作費の高騰に加えて、“働き方改革”が追い討ちを掛けた。そしてこう嘆息して付け加える。

「今や週刊誌の後追いだけですよ」

小型、高性能化した映像機器により、専門知識がなくとも、テレビ放送に耐えうる映像を撮影することが出来るようになった。かつて、持ち運びできるテレビカメラの普及で隆盛をきわめたワイドショーが、皮肉なことに現在では、さらなる新技術の登場によって衰退しているのだ。

芸能プロダクションとのしがらみがない週刊誌の記者が、かつての芸能レポーターのように〝直撃〟。その映像や音声をテレビ局が購入し、あるいはカネを払って貸してもらい、ワイドショーで流す――。

かくしてテレビにおける芸能ニュースは生気を失っていったのだ。