ワイドショーはいつから力の弱いタレントばかり叩くようになったのか

芸能プロとテレビ局「愛憎の50年史」
田崎 健太 プロフィール

芸能人の顔が出せなくなった

芸能ニュースを取り巻く環境も変わりつつあった。芸能人・タレントの「顔」を放送するハードルが上がったのだ。

80年代に入り、芸能プロダクションによる任意団体「日本音楽事業者協会」(音事協)は、まずテレビ局と「VTRの二次使用」について話し合いを繰り返している。

 

それまで、タレントの姿を収めた映像は、テレビ局の判断により番組ごと再放送されたり、あるいは別の番組の資料映像として再使用されることが日常茶飯事だった。もちろん、そのタレントに対するギャラの支払いはない。

このとき音事協は「著作権法」九三条一項の「目的外使用の禁止」を盾に、再使用の場合には芸能プロダクションへの許諾が必要だという契約を締結している。

さらに1990年代に入ると、音事協はワイドショー対策を本格的に講じ始めた。

あるとき、音事協が各キー局の芸能デスクに以下のような申し入れをしたという。

〈今後は所属プロダクションの許諾を得ずに直撃取材をしない〉

〈記者会見、囲み取材の映像については、一定期間のみ使用可。それ以降の再使用は、音事協に申請し、プロダクション側の許諾を得ること〉

ここで問題となるのは、芸能ニュースは〝報道〟なのか、ということだ。

憲法二十一条では〈表現の自由〉が保障されている。また、国民の「知る権利」を担保するために、民主主義国家では、報道の自由が守られている。ワイドショーの直撃取材が「報道」であるならば、上記のような申し入れは普通、受け入れられないだろう。

放送法の第三条には以下の規定もある。

〈放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない〉

しかし、各局が申し入れに反発することはなかった。

音事協に問い合わせたところ、

「当時の交渉を知る人間はもういないので、はっきりとは分からない。ただ、テレビ局側から報道の自由に抵触するのではないかという反対を受けた、という話は聞かない」

という返事だった。ワイドショー側には、「自分たちは〝報道〟ではない」という負い目があったのだろう。  

しかも、この制度には悪しき抜け道があった。音事協に加盟していない中小の芸能プロダクション所属のタレント、アーティストは、この協定に守られない。

しだいにワイドショーは、音事協の「傘」から外れた政治力のないタレントを叩くという、いわば陰湿な方向に進んでゆく。