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「中国は好き、アメリカは嫌い…」アジアで中華文化が浸透する理由

カンボジアを旅しながら感じたこと
阿古 智子 プロフィール

今回私は、古くからカンボジアに住む華人に主に話を聞いたが、ここ数十年、中国や中華圏から多くの人たちがカンボジアに流入している。

高学歴の中国人青年が、カンボジアの工場や企業の管理職を務めていると聞くし、中国大陸の富裕層が、大型の不動産投資や金融事業をカンボジアで行っている。

このような豊かな新華人の子どもは、仮にカンボジアに親と一緒に移住しても、通うのはインターナショナルスクールなどが多いのだろうか。

プノンペンの中心部で立ち寄った小さな私立保育園は、毎学期の学費が全日制で180ドル、半日制で130ドルだった。華語学校の学費は中学校でも80ドルだったから、カンボジアの一般家庭の基準からすると、高いと言えるだろう。

富裕な新華人が目立ちすぎると、カンボジアの一般庶民の間で怨嗟の声が高まり、反中暴動などに発展する可能性もあるのではないか。

世界各地で暮らし、働く華人は、生活している国の文化を尊重し、コミュニティに溶け込んでいる。国際結婚する人も多いし、地元の言葉を習得している二世、三世は、多様なアイデンティティを受け入れている。

 

中華料理や中華圏の伝統文化も広がっているが、たいていは、他の文化の邪魔をしすぎず、共存するような形をとっているのではないだろうか。

華人社会は非常に国際的で開放的あると感じる。それに対して、中国政府が推進する孔子学院などの教育や文化事業は、国家主義的で、排他的であるように、筆者は感じてしまう。

習近平国家主席が掲げる「中華民族の復興」の「中華」が、多様な価値観を尊重する方向に発展することは難しいのだろうか。華語学校も含め、カンボジアの学校は、シハモニ国王と国王の母であるモニク妃の肖像画を講堂や教室に掲げている。

まさか、これが習近平国家主席にかけかえられることはないだろうな……なんて想像してしまった。中国の一部のチベット寺院が、宗教指導者ではなく、国家指導者の肖像画をかけさせられているように1

そのようなことは、まずないはずだ。

今回訪れた華語学校では、中国政府に派遣された若い先生が多数働いていた。異国で、中国より貧しいカンボジアでの生活では、苦労も多いだろう。

だが、彼ら・彼女らは嬉々としていて、子どもたちを大切に育てようとしていた。国際貢献や国際平和の夢を抱いて海外に飛び出していく日本の若者に見たのと同じ、キラキラした瞳だった。

中華が寛容な包容力を発展させて欲しい……と切に思った。

1 2011年12月、中国のチベット自治区の寺院で「九有政策」が採択され、すべての寺院に毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤の肖像、中国の国旗(五星紅旗)、共産党の機関紙(『人民日報』と『西蔵日報』)、水道、電気、道路、ケーブルテレビ、映画上映設備、図書館の9つを備えるよう指示が出された。

【参考文献】
上林俊介「カンボジアにおける華人と華語学校の歴史」西野節男編著『現代カンボジア教育の諸相』2009年、東洋大学アジア文化研究所
大塚豊「カンボジアにおける華人・華語学校の断絶と復興」西野節男編著、同
掲書
木村文「中国はカンボジアに買われたのか」『海外事情』2017年10月号
野澤知弘(2008)「カンボジアの華人社会-華語教育の再興と発展」『アジア研究』Vol.54, No1.