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「中国は好き、アメリカは嫌い…」アジアで中華文化が浸透する理由

カンボジアを旅しながら感じたこと
阿古 智子 プロフィール

カンボジアはまだまだ貧しい。私はその事実を理解しているつもりだったが、今回現地で見聞きするなかで、さまざまなことに驚かされた。

例えば、給料はたいてい、銀行口座経由で支払われていない。最近になってようやく、公務員の給与支払いに銀行口座が使われ始めたのだという。

安定した、効率のよい郵便サービスやデリバリーのシステムも構築されていない。郵便物が届かないことがよくあるし、届けてくれた郵便局員にチップを要求されることもあるのだという。

大事な小包を地方から送ってもらう際には、郵便局には頼まず、信頼できる友人に頼むのだと友人は言っていた。

首都プノンペンでもこのような状況なのだ。中国では、屋台のおばさんでさえ、スマホ決済のシステムを利用しているし、かなり不便な農村でも、宅配便が使われるようになってきているというのに!

年金、生活保護、医療保険など、公的な社会保障も整備されていない。政府が積極的にセーフティネットを構築しないから、家族や親戚、友人、信頼できる人たちとのネットワークが重要になる。

当然、ネポティズム(縁故主義)や贈収賄がはびこりやすく、弊害も大きい。

しかし、「人びとに仕事があれば、国は乱れない。子どもたちが荒れない」「改革開放こそ、自由民主」という考え方は、まさに生存権を重視する「自由」の発想だ。発展途上国において、政治的自由や個人主義の尊重は、なかなか馴染んでいかない。

プノンペン〔PHOTO〕gettyimages

中華の包容力と覇権

かつて、イギリスの国際政治経済学者のスーザン・ストレンジ(1998年没)は、「権力」(パワー)を、(1)「関係的権力」(主体間の関係に即して行使される権力)と、(2)「構造的権力」(露骨なパワーの行使が意識されないまま、主体をある種の行為へと導いていく枠組み・構造)に分け、アメリカ主導のグローバル化に警鐘をならした。

中華的包容力は、国際社会を包む構造的権力になりつつあるのか。中国の経済力が拡大する中、世界は中国の流れに否応なく巻き込まれている。

 

しかし、中国も、中国とつながりの深い国々も、経済成長が停滞すれば、社会の矛盾が先鋭化するだろう。

2003年、タイの女優が「アンコールワットはタイのもの」とテレビで発言したとの報道が広がり、この報道を信じて憤ったカンボジア人たちが、プノンペンのタイ大使館を包囲し、タイ国旗を焼いたり、館内に侵入して放火を行ったりの暴動に発展した。

アンコールワットはカンボジア人の誇りであり、それを否定され、カンボジアの人々は怒りを沸騰させたのだろうが、その背景には、富めるタイとカンボジアの経済格差が広がるなか、カンボジア人のタイへの感情が悪化していたという事情もある。