トランプ、ついに事情聴取へ…追い込まれた大統領の「思考回路」

捜査チームがぶつける「切り札」とは
海野 素央 プロフィール

ウォーターゲート事件に酷似

ウォーターゲート事件とロシア疑惑は、大統領の「身から出た錆」という点で、実によく似ています。1973年10月20日、リチャード・ニクソン大統領(当時)が、ウォーターゲート事件の捜査を指揮していたアーチボルド・コックス特別検察官を解任すると、世論は一気にニクソン弾劾の方向へ動きました。

米世論調査会社ギャラップによれば、「ニクソン大統領は弾劾されるべきである」と考える米国民は同年6月の段階で19%でしたが、コックス氏が解任されると33%に上がり、その後も弾劾の支持率は上昇、翌年74年4月には46%にも達しました。

米国民は「ニクソン大統領は捜査妨害をして、事実を隠ぺいしようとしている」とみるようになったのです。つまり、捜査の手を緩めさせようとコックス氏を解任したことが逆効果になり、傷を広げてしまったということです。

ニクソン大統領(Photo by gettyimages)

今回のロシア疑惑においても、「なぜトランプ大統領はロシア疑惑を放っておけないのか」、「なぜモラー特別検察官の捜査に介入したがるのか」、「どうしてトランプ大統領はコミーFBI長官を更迭したのか」、「フリン大統領補佐官を解任した本当の理由は何か」など、米国民からはトランプ大統領の言動を疑問視する声が上がっています。

トランプ氏の場合、コミー氏の解任によって捜査を打ち切りにするどころか、かえって「司法妨害」をしている疑いを深めてしまう結果になりました。

トランプ大統領にとってさらに悪いことには、前述した通り、米ニューヨーク・タイムズ紙が「トランプ大統領は昨年の夏にモラー特別検察官更迭の指示を出していた」と報じました。

同紙によれば、トランプ大統領がモラー氏解任を断念したのは、顧問弁護士に「リスクが高すぎる」と止められたためだといいます。顧問弁護士は、モラー氏更迭が、ロシア疑惑に関する世論の風向きを一変させる出来事=「ゲームチェンジャー」になってしまうと判断したのでしょう。

ウォーターゲート事件を経験している米国民は、こうした経緯にコックス氏の解任を思い出し、トランプ大統領の言動にますます疑いの目を向けるでしょう。

 

どんどん人間不信に陥る

さて、ロシア疑惑を通じてトランプ大統領の行動パターンと思考様式が明確になりました。その中核となっているのは、側近たちに対して強い「忠誠心」を要求することーー裏返して言えば、極度の「人間不信」です。

コミー前長官は、トランプ大統領がホワイトハウスで同長官に「忠誠心を求めた」と証言しました。前述しましたが、トランプ大統領はセッションズ司法長官にも、同様に忠誠心を示すことを求めました。

また米ワシントン・ポスト紙は、2016年の米大統領選挙の際、トランプ大統領がアンドリュー・マケイブFBI副長官に「どの候補に投票したんだ」と尋ねた、と報じています。仮にこの記事が真実であるならば、トランプ大統領は、捜査機関の要職にあるマケイブ副長官に対しても忠誠を確認したといえます。

「人間不信」のもう一つの側面が、トランプ大統領の「ファミリービジネス」的な思考様式です。周知の通り、トランプ大統領は政府要職に家族・親族を数多く配置しています。その一方で、閣僚や政府職員を家族経営の会社で働く従業員のように扱い、突然解雇したり、あるいは圧力をかけようとします。

コミーFBI長官の更迭やセッションズ司法長官に対する圧力、また独立機関であるFBIに指名されたモラー特別検察官更迭の指示も、トランプ大統領が「ファミリービジネス」の感覚で政権運営を行っていることに起因します。

トランプ政権は2年目に入りました。いよいよロシア疑惑の捜査が大詰めを迎える中、側近に「忠誠」を誓わせ、従わない者には「圧力」をもって応えるトランプ流のやりかたは、どこまで通用するのでしょうか。