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子供を預け合って不倫に走る「タワーマンション」のママ友たち

A子とB美の複雑な感情【20】

元日本経済新聞記者にして元AV女優の作家・鈴木涼美さんが、現代社会を生きる女性たちのありとあらゆる対立構造を、「Aサイド」「Bサイド」の前後編で浮き彫りにしていく本連載。今回は、第9試合「不倫」対決のBサイド。

今回のヒロインは、9年前に結婚し、都心のタワーマンションに住む専業主婦。女子たちの間では勝ち組のはずですが「寂しさ」に苛まれ迷走中……。

*バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/suzumisuzuki

「寂しい」はややこしい

広い世界を見るのだ、と言っていたのは確か金城一紀原作の映画で窪塚洋介が演じていた主人公だが、人は親から生まれて保育園で友達ができて小学校で仲間ができて中高で彼氏彼女とかまでできても、まだまだ自分の世界を広げようと都会に出て、広い世界に羽ばたいた瞬間に、今度はまた二人だけの親密な世界なんて求め出して親友とか恋人なんかと狭い世界を作ってはそこに籠って、またそこが窮屈になったら外の世界に急に目覚めたりして、本当に忙しない生き物だなぁと思う。

群れでサバンナを駆けるシマウマとかの方がまだシンプルそうに見えるが、正直シマウマの生態に詳しいわけではないので断言は避ける。

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果たして人は、広いところと狭いところを交互に求める不毛な存在な訳だが、孤独や疎外感との向き合い方が定まらない以上、そういった不毛なことを繰り返しながら、そしてそれでも結局満たされずに後悔を繰り返しながら、忙しなく生きていくしかないのも事実。

都会の華々しい空気から疎外されるような田舎から、俺らこんな村イヤだ、と東京へ出て、1000万人もの人がひしめくこの都会でものすごく孤独な夜を過ごし、誰かと繋がっていたい、とツガイになった人たちで、今日も神山町のホテルや豊洲のタワーマンションの明かりが灯る。

都会で眠り慣れている人が、ど田舎のバンガローで寝ようとすると、風や虫の音しかしない静けさにビビって寝付けなかったり怖くなって目が冴えたりするもので、確かに人の気配がない場所というのは孤独だし、もちろん、温かい家庭から一歩踏み出して都会の夜に逃げ込むと、絶え間ない人の気配に病的なほど孤独を感じたりもする。

そんなことはみんな知っているし、わざわざ経験するまでもなく想像できる範囲の事柄なのに、どうして直面するたびに毎回こんなにも狼狽えるのだろうか。その辺りは大きな謎である。

出張ホストとのデートに始まり、歌舞伎町ホストクラブに通い詰め、今もどこぞのホストクラブで出会った変な彼氏と逢瀬を重ねている彼女も、9年前に結婚した時は、あるいはそのような孤独を紛らわす気持ちがあったのかもしれない。少なくとも彼女は今現在の生活も、そもそも手に入れた数年前までの生活も、「寂しい」なんていう言葉を使って振り返ることが多い。

 

「旦那が浮気した時に、ギャーギャー騒いだり泣いたりできなかったのは、万が一そのまま夫婦関係がこじれて離婚とかなったら本気で困るからだと思ってる。浮気してる旦那と住んでるのも寂しいけど、別れるのはもっと無理」。 

そして「寂しい」というのは、あらゆる行動を器用に説明する言葉でありながら、あらゆることをややこしい方向に推し進める言葉でもある。

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