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「持ち家か賃貸か」論争に終止符をうつ、シンプルな結論

寿命100年時代のマネーシフト⑧

前回のマネーシフト(「首都圏不動産「バブルの正体」が分かった」)では、長期的に見て不動産価格は下落の一途を辿っていることや、一極集中によって都市部の地価だけが高騰している現状について解説した。

日本において「持ち家」か「賃貸」かという議論は、永遠に続く神学論争のようなものだった。だが、こうした不動産をめぐる論争にもそろそろピリオドが打たれつつある。背景にあるのは、人口減少に伴う都市部への集約化と不動産価格に対する考え方の変化である。今回のマネーシフトは「持ち家」vs「賃貸」論争についてである。

(この記事は、連載「寿命100年時代のマネーシフト」の第8回です。前回までの連載はこちらから)

持ち家は投資?それとも夢の実現?

住宅を購入するという経済行為と、住宅を借りるという経済行為は、本来、まったく異なる性質のものであり、同一次元で比較することはできない。だが日本では「持ち家」か「賃貸」かという論争が延々と行われてきた。

住宅を所有することは資産に対する支出であり、一方、住宅を借りるのは消費支出ということになる。企業の財務諸表でいえば、持ち家はバランスシート(B/S)に計上され、賃貸住宅への支出は損益計算書(P/L)に計上される。

どのような理由であれ、資産を取得することは「投資」に該当するので、本来なら、投資案件として成功するのかが、すべての評価基準となる。一方、賃貸の場合には純粋な「消費」なので、支出に対して十分な効用が得られているかで判断するのがスジといえるだろう。

それ以外の要素もあるではないか、という話はとりあえず横に置いておき、成功する投資案件とはどのようなものなのか考えてみよう。答はとてもシンプルで、株や債券と同様、投資によって「儲かったかどうか」である。

つまり、不動産の値上がり益や賃貸に出して得られる収益が取得コストを大きく上回れば成功、下回れば失敗である。自己居住用物件の場合、賃貸に出すわけではないが、仮に賃貸に回した時にどのくらいの家賃になるのかは、近隣の相場を見ることで、ある程度、推測できる。

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自分で住んだ場合、家賃を払わなくてもよいので、浮いた家賃分は仮想的な収入と考えることができる。この金額と取得金額を比較することで、最終的な投資損益を判断できるはずだ。

こうした見解について「住宅は儲けるために買うのではない」と感じた読者の方も多いだろう。

確かにマイホームに関して「家族の夢を実現する」「ステータスを得る」「安心感を得る」といった別の要素が絡むことについては筆者も否定しない。

だが、マイホームにこうした投資以外の要素を数多く盛り込むことができたのは、日本の不動産市場に存在していたひとつの商習慣のおかげである。逆にいえば、この商習慣がなくなってしまうと、不動産に投資以外の要素を持ち込むことが極めて難しくなってしまう。

 

不動産「土地神話」が崩壊しつつある

不動産市場における商習慣というのは、再調達価格をベースにした不動産価格の算定方法である。日本では不動産の価格を算定する際、同じ物件をもう一度取得するといくらになるのかを基準にするという手法が長く用いられてきた。

土地と建物を分けて考え、土地については路線価や更地の取引事例などが参照され、建物については建築単価が用いられた。中古物件の場合には、新築の価格から経年分が割り引かれる。

この方法では、近いエリアにある、似たような建物の物件価格はほとんど同じになり、築年数に応じて徐々に価格が下がっていく。土地が高騰すると路線価も上がるので価格も上昇するが、路線価は全体のバランスを考慮に入れて算定されるので、動きは緩やかなものとなる。