「公的年金」結局、何歳からもらうのが得か損か

余命と老後収入のマトリックスで考える
竹中 正治 プロフィール

公的年金への課税と「在職老齢年金」

さらに2点、受給開始年齢を決める上で考えるべき点がある。第1は税金である。公的年金の受取所得については「公的年金等控除額」が適用され税金面で優遇されてはいるが、やはり税金はかかる。

公的年金等控除額の計算は、65歳未満と65歳以上で異なり、具体的には公的年金等控除額に関する国税庁のサイトに開示されている計算方法をご参照頂きたい。

例えば65歳以上で公的年金の年間収入額が200万円の場合は、控除額は120万円で、それを差し引いた80万円が課税対象の所得額となる。もしその他の所得(給与所得、雑所得など各種控除後)があれば、それを加えたものが最終的な課税所得になる。

第2点は「在職老齢年金」と呼ばれるもので、60歳を超えて老齢厚生年金を受給しながら、厚生年金保険のある事業所で働いていると、給与報酬額に応じて年金が減額される仕組みだ。収入が多い場合には老齢厚生年金がゼロになる場合もある。その減額率は64歳以下ではかなり大きいが、65歳以上では穏かなものになる。詳しくは日本年金機構の関連サイト等をご参照頂きたい。

 

以上の様に公的年金にかかる税金、並びに「在職老齢年金」による減額の仕組み等も勘案すると、年金を巡る損得計算はなかなか厄介な問題になる。しかしここは原理に立ち返り、もっとすっきりと考えるべきだろう。

公的年金の本来の意味と機能とは

私的年金は確定給付か、確定拠出かの違いはあるが、全て所得から拠出された資金が運用され、その元金と運用益を老後に受け取るものだ(積立方式)。したがって積み立てた成果額以上のものは受給されない。

ところが公的年金は世代間賦課方式と呼ばれ、現在の現役世代が支払った資金が現在の高齢者に受給されるものであり、しかも何歳だろうと死ぬまで受給される。そういう意味では高齢で働けなくなったが生存している時期に必要最小限の所得が受給できる「生存保険」であると言える。

一般の生命保険は保険者が死亡した時に遺族などが受け取れる「死亡保険」であるのに対し、公的的年金は生存しているが働いて所得を得られなくなった高齢期の所得をカバーしている国民皆保険である。

もっとも、本当に保険であるなら、保険者が払い込む保険料だけで運営されるべきだが、日本の公的年金は現在、国庫負担(政府からの財政資金の投入)が50%も占める。

国庫負担は納税者の負担であると考えれば、やはり現役納税者の負担である。しかし政府が恒常的な財政赤字である事実を考えれば、将来の納税者の負担に先送りされているとも言える。この事情が日本の公的年金問題を複雑、奇怪にしているように思われる。

その点はともかく、生命保険の場合、本人が早く死んで遺族などが支払った保険料をはるかに超える保険金を受け取ったからと言って本人が喜ぶことはない(死んでいるので喜ぶこともできないが)。同様に公的年金を相対的に多く受け取ったからと言っても、それは所得のない老後が予想された平均より長くなっただけであり、「得した」と感じるのは実は本末転倒ではなかろうか。

この点は人生の姿勢の問題でもあるので各人各様ではあり得るが、働ける間は働いて、私的年金を含む資産を形成し、働けなくなったら(あるいは十分資産形成してもう働く必要を感じなくなったら)公的年金を受給するという自然体の方針で臨むのが、最も理に適っているように私は思う。

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