「公的年金」結局、何歳からもらうのが得か損か

余命と老後収入のマトリックスで考える
竹中 正治 プロフィール

現在価値で判断すると

ただし以上は名目受給額に基づいた判断である。中長期にわたるキャッシュフローの価値は、将来キャッシュフローを適当な割引率で割った「現在価値」で測る必要がある。これは金融・投資論の基礎概念であるが、ご存じない方も多いので手短に説明しよう。

今100万円を受け取る価値と1年後に100万円を受け取る価値は等しくない。仮に1%で運用できるなら現在の100万円は1年後には101万円になるので、現在の100万円と等価なのは1年後の101万円(=100万円×1.01)である。

逆に言うと、1年後の100万円は現在の99.01万円(=100/1.01)と等価であると言える。このように将来のキャッシュフローを利回り(割引率)で割った値を現在価値と呼ぶ。2年後の100万円の現在価値ならば1.01の2乗で割って98.03万円(=100/1.012)になる。 

 

この際の割引率は人によって異なるだろう。例えば受け取った年金を運用し、将来にはわたって自分は年率5%で運用できる(期待運用利回り5%)と思う人の割引率は5%である。

あるいは年金を消費する場合でも、1年後に消費するよりも今消費することの価値の方が10%高いと感じる人の割引率は10%と考えられる。

例えば年金が今ないと生活に窮する人の割引率は高くなる。一方、年金以外に当面所得などがあり、年金を今すぐ必要としない人の割引率は相対的に低くなるだろう。

そこで割引率2%の場合と5%の場合の生涯累積受給額の現在価値を示したものが表2と3である。割引率が高いということは、名目が同額でも将来受け取る金額ほど現在価値が小さくなるので、早めに需給を開始した方が有利だということになる。