求刑は懲役6年…母親が無罪を訴え続ける「虐待事件」裁判の行方

「仮説」で起訴された悲劇
柳原 三佳 プロフィール

祖母の嘆き

法廷で公開された写真の中には、兄と妹が仲良く写る一枚もあった。

生まれたばかりの妹のベビーベッドの中で、頬をすりあわせ、嬉しそうに添い寝をしているAくん。この写真が書画カメラに映されると、京子さんは束の間の幸せな思い出を振り返りながら、他の質問よりも時間をかけて説明した。

「動きの激しい息子を赤ちゃんのそばに近づけるのは危ないとも思いました。でも、このとき長男はBちゃんのことを、『アチャカンマ』と呼んで、寄り添っていたんです。そんな二人の姿がとても可愛くて……。

助産師さんには、お兄ちゃんの気持ちを優先してあげてねと言われていましたし、妹が生まれてから少し焼きもちを焼いていた長男に、なんとか妹のことを好きになってもらいたい、私の中にそんな気持ちもあったと思います」

産後の肥立ちの悪い中、人一倍動きの激しいAくんの面倒を見ながら、生まれたての赤ちゃんをひとりで懸命に育てていた京子さん。夫の忠雄さんは、動きの激しいAくんを、まだ首の座らない赤ちゃんのそばに置くのは危険だと考え、Aくんを一時的に実家に預けることを検討していた矢先だった。

 

たしかに、起こってはいけない大変な出来事が起こったことは事実だ。しかし、傍聴席で彼女の供述を聞き、またこの数日前、直接自宅にも伺って井川さん夫妻や京子さんの母親の話を聞いていた私は、この家族の日常に「殺意」や「虐待」といった言葉を結びつけることがどうしてもできなかった。

京子さんの母親は、今回の出来事について怒りを込めながらこう語った。

娘たち夫婦も、私たち家族も本当につらいんです。子供がこうなってしまった事の現実を受け止めるだけでも精いっぱいで、大変な状況なんです。本来はこうした苦しい心境を理解し、寄り添うのがソーシャルワークのひとつではないのでしょうか。

それなのに児童相談所は、この二人の精神状態を理解するどころか、まだ親が恋しい盛りの2歳の子どもを一方的に連れ去ってしまいました。

その上、発達障害があったあの子のことをまったく理解しようともせず、親によるネグレクトの影響が出ているとまで言い放ったのです。私は2~3歳の大切な時期に9カ月間も親から引き離されたことによる影響が心配でなりません」