「焼身自殺で抗議しようと思った」地面師被害者を苦しめた警察の怠慢

騙し取られた総額、5億円

「焼身自殺をしてやろうとも思った」

その弁護士がどう動いたのか、については定かではない。一方、松田の身柄を押さえられる状況だった町田警察署の捜査は、そこから迷走を極める。その原因は捜査のやる気のなさというより、まったく見当違いな筋立てをしたせいだといえる。あろうことか、町田署では被害者の津波を共犯に見立ててしまうのである。

津波は世田谷の元NTT寮の購入のため、取引先のY銀行からその分の融資を受けた。それについて、津波が地面師たちと共謀し、銀行から融資を騙し取ろうとしたのではないか、と疑ったというのである。

「私は融資に関して個人の連帯保証をしているんですよ。つまり会社が返済できなければ代わって私個人が銀行に払わなければならないのに、なぜそんなことをする必要性があるのか。その間違いがひどいのです。

当初、私は町田署に取引の資料や私の仕事のノートを提出し、担当の係長がコピーしていました。そこには、この件だけでなく、海外の仕事の計画やそれにまつわる資金需要のことも書いていました。それを見た係長が、銀行から融資金を騙し取り、海外に持ち出そうとしたのではないか、と疑ったのです。『ベトナムにカネを運ぶつもりだったんじゃないか』と。そんな明後日の方向の話をしていたのです」

 

まるっきりの妄想というほかない。が、町田署の係長は現に津波にそう告げたのだという。その上で、前述したように「みなで松田を責め立てたのはマズかったな」という係長の発言になるらしい。

つまり町田署は、「津波が人身御供に松田を警察に差し出したが、当人を苛めすぎたので津波も共犯だと漏らした」と見立てていたのだという。

あまりに荒唐無稽な話だが、事実、いっとき地面師仲間のあいだでは「津波共犯説」が流れた。むろんそれは彼らがよく行う捜査のかく乱のための情報操作であり、当局がそこにまんまと乗せられたともいえる。

この間、主犯格の北田は自ら町田署に出頭。似たような話をしてきたとも伝えられる。津波は今もこう憤る。

あのときは本当に悔しくて、警察署の玄関先で焼身自殺をしてやろうと思いました。そのくらい絶望的になりました。実際、それを会社の弁護士の先生にも相談したほどです」

津波にとっての救世主が、その顧問弁護士だったかもしれない。

(文中敬称略。次回へ続く)

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