「相続大改正」家族とモメずに得する方法を教えよう

ポイントは「居住権」と「妻の権利」
週刊現代 プロフィール

妹と妻がモメはじめる

藤田氏の妻は、10年前から、仕事もやめて、義父の介護に専念してきた。これまで、妹からは感謝の言葉も一切なかった。

「これだけ介護をやってきたのに。お義母さんも寝たきりに近い。死ぬまで『タダ働き』をしていかねばならないのか」

こう思う藤田氏の妻だったが、今までは「泣き寝入り」だったのだ。

今回の見直しで、やっと藤田氏の妻も救われるようになる。

相続人以外でも、介護などで尽力した場合は、相続人に対し、金銭を請求できるようになる。具体的には、6親等(いとこの孫など)以内の血族、それに3親等(甥や姪)以内の配偶者を指す。

今回主に想定されているのは、藤田氏の妻のような「嫁」である。

新制度において、藤田一家では以下のような遺産分割が可能になる(ページ末の図③、吉田氏と同様、自宅が4000万円相当、預貯金2000万円)。

まず、藤田氏の母に居住権を設定したうえ、1000万円の現金を配分。本来は藤田氏と妹が自宅の所有権2分の1(1000万円分)ずつと500万円ずつを相続するのだが、このうち、妹の自宅の所有権を、藤田氏に移転させる。

妹の持ち分のうち1000万円分を、妻の「介護の対価」分として動かすわけだ。結果的に、藤田夫妻は、安定して自宅を所有することができる。

だが、妹が納得するかどうか?制度が変わったとはいえ、ここでトラブルが起こりがちだ。

「貢献をいくらと評価するかは、当事者間での協議が基本になってしまいます。家族仲が悪く、感情的に『渡したくない人間』『欲しい人間』が対立している状況下では、争いは避けられないのです」(曽根氏)

協議がうまくいかなければ裁判所での調停になる。そこでは介護をした時間や、時間給などから計算されるが、藤田氏の妹が「自宅の所有権」を手放すことに対して、納得できるかは別問題だ。

新制度でモメない相続を行うには、「被相続人が、生前に介護者に対する評価について、意思を明確にしておくことが重要」だと曽根氏は言う。

「遺言書に『介護をしてくれた息子の嫁のA子さんに、1000万円分の資産を与える』などと明記しておくことです。遺言書のハードルが高ければ、エンディングノートのようなものでいいので、記しておくべきです」

 

今回、この遺言書についてのルールも見直しがなされる。④本人が自ら書く「自筆証書遺言」の財産目録をパソコンで印字できるようになるほか、法務局で預かってもらえることになるのだ。

「これまでは、自筆の遺言書があっても、日付がなかったり押印がなかったりするなど、ちょっとした不手際で無効になるケースがありました。遺言書が紛失し、裁判沙汰になることもあった。法務局での保管で、これらのトラブルは激減するでしょう」(前出・佐藤氏)

一連の改正案をどう見るか。「夫に先立たれた高齢者を優遇しているものだが、手放しでは喜べない」と語るのはライフカウンセラーの紀平正幸氏。

「国は現在、厳しい年金財政の立て直しを迫られ、高齢者の年金の減額も検討している。その前に、お金をかけず高齢者を優遇するイメージを打ち出したかったのでしょう」

相続という大問題は、誰もが通過するもの。家族での話し合いからはじめ、大改正に備えたい。

「週刊現代」2018年2月3日号より