「相続大改正」家族とモメずに得する方法を教えよう

ポイントは「居住権」と「妻の権利」
週刊現代 プロフィール

「居住権」選択は慎重に

吉田氏の母にとっても、吉田氏にとっても安心な制度にみえる。しかし、「居住権を選択するかどうかについては注意が必要です」と語るのは税理士の佐藤正明氏だ。

「居住権はあくまで『住み続ける権利』で、自宅を売却する権利はありません。将来的に自宅を売り、売却代金で老人ホームに入居する可能性がある人などは、選択しないほうがいいでしょう」

ジャーナリストの荻原博子氏は、居住権の評価額の設定が問題だと言う。

「配偶者の年齢の平均余命などから算出されますから、妻の年齢が若ければ、居住権の評価額が従来の所有権と同じくらい高くなってしまい、現金の配分は逆に減ってしまう。居住権は譲渡も売却もできませんから、評価額の算出方法は、もっと練られるべきです」

これについては、国会の審議を注目したい。

 

吉田氏の母親のような人を救うための制度が、今回もう一つ加えられる。②妻に生前贈与や遺言で贈られた自宅は、遺産分割の対象外になるのだ。

そもそも吉田一家のような悲劇が起こるのは、「自宅そのものを分割するのが難しい」という当たり前の事実ゆえだ。

新制度では、吉田氏の父親が、妻に対して自宅を生前贈与しておけば、その分は遺産の総額から除外される。これまでは、生前贈与された自宅も、遺産に含められて計算されてしまっていた。

これからは、吉田氏の母に自宅の生前贈与がなされていれば、預貯金2000万円だけを、法定通りに3人で分け合えばいい。吉田氏の母が1000万円、吉田氏が500万円、そして妹が500万円を受け取る。

こうなっていれば、吉田氏の妹夫妻も、手も足も出せないだろう。醜い親族トラブルを避けるには、使い勝手がいい。この明白な妻への優遇策は「長年連れ添った配偶者の取り分が少ないのではないかという懸案の解決につながる」(作花氏)。

ただしこの制度が使えるのは、「結婚から20年以上の夫婦」にかぎられる。仮に生前贈与を行っていたとしても、たとえば結婚19年目に夫が亡くなってしまった場合は、自宅も遺産分割の対象になるので、注意が必要だ。

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さて、今回、想定外の大トラブルも起こりそうなのが、③息子の嫁などが介護に尽力していた場合、金銭が請求可能になるという新制度だ。

藤田進治氏(仮名・65歳)のケースをみてみよう。87歳になる父、86歳の母と、都内の実家で同居してきた。この12年間、認知症で「要介護4」の父の介護をしてきたのは、藤田氏の妻(63歳)だ。3年前には、母親も脳梗塞で倒れ、健康状態は予断を許さない。

藤田氏にも妹(60歳)がいるが、いっさい実家に寄りつくことはなく、ここ数年は年賀状のやりとりだけだ。

昨年8月、藤田氏の父が亡くなった。だが、藤田氏とその妹では、現行では相続額は同じだ。

「介護した嫁や、その夫(藤田氏)は、妹よりも自分が多くの遺産をもらっていいのではないか、と考えるものです。しかし、ここで藤田夫妻が強く出れば、必ずといっていいほどトラブルになる。

妹からすれば『長男なのだから、親の面倒を見るのは当然』『親の自宅にタダで住んできたのだから、メリットを受けているだろう。別途要求するのはおかしい』というわけです」(「夢相続」代表で相続コーディネーターの曽根恵子氏)