2018.07.17
# ライフ

「離婚で子供に会えない」を減らすための、ある弁護士の試み

新たな解決方法を模索して
西牟田 靖 プロフィール

時間が経てば経つほど

日本では離婚した後に、片方の親が親権を持つという、単独親権制度がとられている。別居した後、親同士がもめてしまい、法廷での紛争(調停、審判、裁判)に持ち込まれた場合、子供と一緒に暮らしている親が引き続き、一緒に暮らしたり、親権をとることが通例となっている(継続性の原則)。

そのためなのだろう。子供の親権を持ち、子供と一緒に暮らしたい親が、片方の親を追い出したり、子供を連れて別居したり、という手段に出ることがよくある。紛争(調停や審判、裁判)で双方に弁護士がついたことから、状況が複雑化、あることないことがごちゃ混ぜの“泥沼の戦い”に突入してしまったりすることが珍しくない。

そうした現状を疑問視する弁護士もいる。その一人が、"離婚と親子の相談室らぽーる"でADR(裁判外紛争解決手続)に関わっており、離婚紛争において発生する親権問題に詳しい、横粂勝仁弁護士だ。

 

横粂弁護士に、諸々の問題について訊ねてみた。

――調停や裁判といった紛争の中で、親権獲得を有利にするために、弁護士が親と子供を引き離したり、連れ去ったりするという手法を示唆することは、実際にある話なのですか?
「引き離し罪や連れ去り罪といったものはありませんし、Aさんのケースのように、夫と子供が引き離されることも、それ自体は犯罪ではありません。弁護士は依頼者を勝たせることが何より大事ですから、よくあると言えるかは分かりませんが、そうした手法が採られることは、現実的にあります。

長く監護した親のほうに親権や監護権を認めるという『継続性の原則』がありまして、離婚時に、親権や監護権を得たいと依頼してきた方に、積極的に『連れ去れ』とは言わなくても、

『相手は子育てに積極的、しかも実家は近くですので、相手が子供の監護をすることが十分可能ですね。これはあくまで一般論ですが、連れ去っちゃった人が親権や監護権を認められるというケースはたくさんありますよ』

というふうに一般論として説明して、『先に連れ去ったほうが有利』ということをほのめかすことはあるかもしれません」

拙著『わが子に会えない』にも記したが、離婚紛争の途中で、相手側から身に覚えのない暴力を主張された、と話す人が実に多い。罰則がないので、虚偽だと判明しても、それを主張した側にはなんのお咎めもない。そうした“嘘”について反論しているうちに、別居状態がさらに長引くことになる。いわゆる、「虚偽DV」と呼ばれている問題だ。

もちろん、子供や配偶者に対するDVは許されるものではない。本人が否定していも、実際にはDVを行っているケースもあるだろう。しかし、現実に「虚偽DV」という問題は存在すると横粂弁護士は指摘する。

「まず、DVの問題は非常にセンシティブです。深刻なDVに悩んでいる方が多くいることは認識していますし、絶対に許されない行為です。また、おっしゃる通りDVを行ったにもかかわらず、加害者がそれを否定するというケースもあるので、とても難しい問題です。その判断は慎重になされるべきです。

しかしながら、恒常的な暴力はなかったにもかかわらず、裁判で『DVがあった』と認定されるケースも一部存在していることもまた事実です。

弁護士は依頼者の要望通りに事を進めるために、相談の中で、どういったことを主張すればいいのか提案していくわけですが、離婚がテーマの場合、特に重要となるのが、『相手が不利となるような証拠』です。つまり、浮気やDVの『証拠』があれば、依頼者に有利な形で離婚裁判を進めることができます。

しかし、証拠がないとなかなか認められない。そこで、

『暴言を吐いた様子の録音などといった証拠を集めてから、離婚を申し立てるのがいいんじゃないですか』

と弁護士が依頼者に伝えることもあるでしょう。その『助言』を受けて、依頼者が、それならわざと相手を怒らせて、その声を録音して証拠にしよう……と考えても不思議ではありません」

たった一度でも暴言や怒鳴り声をあげてしまい、それが証拠として提出された場合、裁判官の心証は大変悪くなる、という。

「どんなに温厚な人でも、罵倒され続けると腹が立ちますよね。罵倒を続けて、堪忍袋の緒が切れて『いいかげんにしろ』と怒鳴ったところを録音される。

そしてそれを証拠に、『DVを受けた』と主張されてしまったりすることがあります。こうした手法は法律で禁止されている訳ではないのです」

違法でなければ、テクニックとして、そうした方法を使うことも辞さない――そうした手法が採られることもある、ということを横粂弁護士は暗にほのめかした。

――親権を取られたとしても、子供と定期的に会い、育児に関わることが出来れば、まだ納得がいきます。しかし別居親の中には、育てることどころか、会うことすら出来ていない人が多くいる。これはなぜでしょうか。
「子供を連れ去られた、と主張する側が面会交流や離婚の調停中に定期的な面会を求めたとしても、言い分はほとんど却下されます。面会が決まったとしても、それは月に1回か2回、2時間ずつといった短時間が相場です。

また、面会がうまくいくとは限りません。相手に『お父さん(お母さん)が悪い』『お父さん(お母さん)はひどい人』などと吹き込まれた子供が、敵意や警戒心を持ってしまったり、それがなくても空白を埋めるのが大変だったり、会う時間が短すぎてうまくコミュニケーションがとれなかったりするからです。

それを受けて『親として不適格』ということで面会がどんどん減らされたり、あるいは『子供が会いたがらない』『病気になった』『時間が合わない』という理由で面会がキャンセルされ、再会が先延ばしになったりすることも少なくありません。

母親が会わせたくないばかりに、毎回何かと理由をつけて会わせない等々、時間が経つにつれて、親子関係が断絶してしまうということが多々あるのです」

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