2018.07.17
# ライフ

「離婚で子供に会えない」を減らすための、ある弁護士の試み

新たな解決方法を模索して
西牟田 靖 プロフィール

子供とは会えないままで

その後の状況について、Aさんに詳しく話を聞いた。

――その後、お子さんとは会えたんですか。
「最初の6ヵ月は飛び飛びで面会できていました。しかしその後は『子供が熱を出した』『予定を入れた』『お腹が痛い』『会いたくない』などの理由で毎回キャンセルされるようになりました。

そこで私は、妻側の弁護士に抗議しました。『毎回、面会を休むのはヘンです。診断書を出してください』と。しかし、その提案は無視されてしまいました。私は『これでお子さんに会えますよ』という裁判官の甘言に釣られてしまいました。子供たちとはもう10年もの間会っていません」

――それで和解した後はどうされたのですか。
「『あんた民法知ってんの?』という暴言を吐いたりするなど、妻側の弁護士の言動に承服しがたいものがあった。そこでその弁護士が所属する弁護士会に懲戒請求(※)をかけたんです。しかし、その弁護士会に却下されてしまいました」

(※懲戒請求――弁護士法によると「何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる」(第58条)とある。)

Aさんはその却下を不服とし、日本弁護士連合会(日弁連)に異議を申し出た。それを受け、後日、日弁連の懲戒委員会で審査が行われた。

「日弁連が、調停中の妻側弁護士の『民法知ってるの』などといった暴言を問題視したようです。その結果、懲戒請求が元の弁護士会に差し戻されまして、懲戒委員会が開かれました。それがこの議事録です」

 

そこには次のようなことが記されていた。括弧内に原文を要約してみよう。これは、妻側の弁護士が、懲戒委員会で発言したものだ。

「どうしても子供とAさんとの面会交流をさせたくないという強い希望が(依頼者であるAさんの妻から)ありました。和解の中で、面会の条項を定めることも彼女は嫌がっていた。当日、話し合いの場に彼女がいなかったので、裁判官が私の携帯電話を通じて、長い時間をかけて説得をし、『こういう条項を入れるからどうですか』みたいなご提案をされて、それでようやく決まった条項なのだと認識しています」

これをかみ砕いて、第三者の目で書くと次のように解釈できる。

「どうすればAさんと子供を会わせないで済むか、裁判所の和解室で妻側の弁護士と裁判官が協議した。その結果、『形式的には面会交流を認めるものの、条項を設けておくことで、Aさんと子供を会わせなくて済むようにする』という内容で話がまとまった。

妻側の弁護士は確認のため、自分の携帯電話を使い、依頼人であるAさんの妻に電話。ところが、面会交流自体を認めたくない妻を説得しきれなかった。

そこで、その妻側の弁護士は、裁判官に自分の携帯電話を渡し、Aさんの妻を直接説得してもらった。『面会交流は認めるものの、但し書き条項を入れることで、それを理由に会わせなくて済むんですよ』という言葉を裁判官から聞いたAさんの妻はようやく納得し、電話を切った。そうやって決まった条項だった」

その後、Aさんは、裁判官の和解提案に応じた。もちろんそのとき、Aさんは知らなかった。妻側弁護士と裁判官がこんな話し合いをしていたことを。

結局、Aさんは10年もの間、子供たちと会えないままだという。

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