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「離婚で子供に会えない」を減らすための、ある弁護士の試み

新たな解決方法を模索して

離婚を巡る夫婦の話し合い。円滑に進めばよいのだが、特に子供がいる場合は、親権を巡って夫と妻の間で激しい争いとなってしまうケースが多い。近年では、弁護士が依頼者に強く肩入れして、決して子供と夫婦のためにはならないような「助言」を行うこともあるのだという。

妻と離婚し、その後、子どもに会えなくなったというAさんの話と、「円満な離婚」を推進するため、新たな取り組みを行っている横粂勝仁弁護士の話から、いまの「離婚紛争の問題点」と改善策について考えてみたい。

別れるつもりはなかったのに

「13年前、妻と息子二人と一緒に暮らしていたときのこと。ある日、妻が浮気をしているかもしれないことに気づきました。携帯を置いたまま外出した妻の携帯がチカチカ光っていて、画面には、知らない男の名前が表示されているんです。浮気じゃないかと疑った私は、本人に問いただしました。すると妻は男との一定の関係は認めたうえで、『一線は越えてない』と言い張りました。

同居している義父母を交えて話し合ったのですが、妻を叱ってくれるどころか逆にかばってしまい、なぜか私が悪者に……。結果、妻や義父母との仲がこじれてしまいました」

こう話すのは、離婚後、息子と会えなくなってしまったAさんだ。妻をかばう義父母らによって家に居づらくなったため、その日、Aさんはやむなく実家に泊まった。それ以来、妻の実家に戻ることはできず、別居状態となった。なんとか子供にだけは会いたいと、毎週末、妻の自宅へ戻ったが、そのうちわざと留守にされるなど、子供たちから遠ざけられたという。

別居して10ヵ月あまりが過ぎたある日、その関係に突然変化が訪れる。

「妻は離婚について弁護士に相談していました。ある日、妻側の弁護士から夫婦関係調整調停の申立書というものが届いたのです。そこには調停の日時や場所が記されていました。要は、家から荷物を全部移して、離婚をしてくれ、ということです。私は弁護士を雇い、指定された裁判所へ出向いて、こう主張しました。

『子供たち二人がまだ小さい。だから別れる気はありません。住んでいる家から荷物を移す必要も感じません』と。

するとその場にいた妻側の女性弁護士が突然怒りだし、私や私の担当弁護士に『あんた民法知ってんの? こうなったら訴訟だ!』と叫んで、話し合いが行われていた調停室から、調停委員会の許可なく退出してしまったのです。唖然とするほかありませんでした」

 

その後、妻側の弁護士は離婚等を求める訴訟の書面を出してきた。その文面を確認したAさんは目を疑った。

「一審の家庭裁判所での妻側の離婚訴訟の書面には、私が妻や子に振るったとする、DVの事例がいくつも記されていました。

例えば、離婚訴訟中に子供を連れて結婚式に行ったとき、前泊したホテルで子供がベッドから落ちたんですが、それを私のDVが原因だと主張されたんです。こうした事例が家庭裁判所にDVとして認められてしまい、その結果、私はDV夫と見なされ、親権を妻に取られてしまったんです。

納得できるはずもなく、私はすぐに東京高等裁判所に控訴しました。ところが審理は一度も行われず、なぜか裁判官から『裁判所に来るように』と呼び出されました。それを受け、私が裁判所の和解室に出向くと、裁判官が私に和解を勧めてきたんです」

以下は、その裁判官との和解室での会話を再現したものだ。

裁判官「旦那さん、あなたがDVするから奥さんが浮気したんでしょ。慰謝料、大幅減額してあげるから和解しなさいよ。いくらなら払えますか?」

Aさん「大幅減額って、(DV)やってないんですから減額も何もないじゃないですか。慰謝料なんて払う気はありません」

裁判官「家庭裁判所でそう決まりましたよ」

Aさん「だから控訴してるんじゃないですか。(裁判中の)今現在でさえ、私が子供に会いに行っても妻は子供に会わせないんですから、(離婚したら)ますます会わせなくしますよ」

裁判官「あ~あ、じゃあ、判決書くしかないかな……。旦那さん、お子さんに会えてないんでしょ。じゃあ会えるように(和解調書に)書いてあげるから、(和解に応じるかどうか)1週間考えてくださいよ」

Aさん「裁判官がそう仰るのでしたら考えます」

1週間後、Aさんは裁判所に再び向かう。そして同じ裁判官と和解室で、再び対峙する。裁判官はAさんに向かって、作成した和解調書を読み上げた。

そこには「(子供との面会交流は)1ヵ月に2回実施、ただし、熱が37℃以上あったり、子供が望まなかったりした場合は実施しない。また(子供に会えなかった場合)代替日は求めない」という条項が列挙されていた。月2回の面会を認めてはいるものの、これでは妻の気持ちひとつで、子どもに会えない可能性がある。この条件はとても飲めない、とAさんは思った。

以下はそのAさんと裁判官との2度目のやりとりである。

Aさん「こんな条項を入れていたら、これを理由に子供に会わせない事ができるじゃないですか。これ(熱があったり、子供が望まなかったりした場合は実施せず、代替日もない、という条項)は外してください」

裁判官「この条項の意味は、例えばお子さんだって、2週間に1度会っていても、たまには気分が乗らない事とか、友達と遊びたいという時だってあるでしょ。そういう意味で、普通、和解調書に入れるんですよ。これでお子さんに会えますよ」

Aさん「(裁判官がそういうのなら)そうですか。わかりました」

以上のやりとりを経て、結局Aさんは和解に応じた。早くわが子に会いたい、という気持ちが日増しに強くなっていたからだ。わが子に会えるなら、それ以上のことはない。だからこらえようと、Aさんは思ったという。