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世界で深まる「中国依存」親日国カンボジアでこんなことが起きている

華語学校・華人コミュニティで見た風景
阿古 智子 プロフィール

クメール人と華人の子どもが並んで学習

教室では、授業開始時間になっても椅子と机が足りず、子どもたちは3人掛けの椅子に4人座ったり、入口付近のベンチに団子状態になって集まったりしている。

教師が、よその教室から机と椅子を持ってこさせた。クラスを入れ替えながら授業を運営するため、机と椅子が足りなくなるのだろう。

教室を見渡すと、肌の色が濃い子どもたちがあちらこちらに見える。両親あるいは父母のどちらかが、クメール人かそのルーツを持つのだろう。

華語の授業を受ける子どもたち。2人用の机を3人で使い、きゅうくつそうだ(筆者撮影)

教師は、当てた生徒がうまく発音できないと、「ピシャッ」と音がなる、ムチのような細い木の棒で教壇を叩いて怒鳴った。

「違うじゃないの、この発音よ。聞きなさい!」延々と発音を繰り返し、例文を棒読みさせている。いかにも古いタイプの教え方だ。それでも、純朴な子どもたちは楽しそうに声を出しているのだが――。

これは、カンボジアでの視察で訪れた華語学校のうち、海南帮が創設した集成学校の華語の授業を見学させてもらった時の一幕だ。カンボジアで生まれ育ったという、華人の年配の女性教師が、クラス全員で教科書の例文を繰り返し発音させていた。

子どもは背が高い子も低い子もいた。華語のレベルによってクラスを編成しているから、年齢がまちまちなのだ。弟を連れてきて、横に座らせている子もいた。親が仕事に出ている間、子守を頼まれているという。

それにしても、ここは首都の学校なのか……。建物は古く、壊れたところが修繕されていない。教室に設置されているのは黒板だけ。

二部制で、クラスごとに固定して教室を使っていないからだろう。子どもの作品を展示したり、クラスの目標を紹介したりといった、通常見られるような教室の風景が見られない。

政府の認可を受けていない、北京の出稼ぎ労働者の子どもたちが集まる学校でも、もう少し学習環境が整っていた。カンボジアの近年の経済発展は目覚ましいが、それでもここはまだ、発展途上国なのだ。

カンボジアでは中国語学習熱が高まっており、東南アジア最大規模とも言われる潮州帮創設の端華学校など、今では生徒数が1万6000人にものぼり、分校や新しい校舎が建っているが、集成学校は華人が少ない地域に移転しなければならなくなったため、生徒数は約1000人から200人に減り、小規模校として存続している。

 

大半のカンボジアの学校のように、集成学校も午前と午後の二部制を採っており、午前に華語による教育を受ける生徒は、午後は他校のクメール語のコースに通う。

クメール語のコースを併設している華語学校もあるが、集成学校は華語コースのみ設置している。

1950〜60年代、高校レベルまである学校もあったが、現在の華語学校は中学レベルまでしかない。カンボジアで生活し、高校、大学と進学するためには、クメール語の学習も重要だ。

華語学校が使う主要な教科書は、カンボジア華人理事総会がカンボジア政府の認可を得た上で、各学校に配布している。

「常識」の教科書を見せてもらったが、カンボジアの政治情勢や地理条件などを考慮した内容だった。教科書の編集には、中国・広東省の暨南大学の専門家らが参加している。

【参考文献】
上林俊介「カンボジアにおける華人と華語学校の歴史」西野節男編著『現代カンボジア教育の諸相』2009年、東洋大学アジア文化研究所
大塚豊「カンボジアにおける華人・華語学校の断絶と復興」西野節男編著、同
掲書
木村文「中国はカンボジアに買われたのか」『海外事情』2017年10月号
野澤知弘(2008)「カンボジアの華人社会-華語教育の再興と発展」『アジア研究』Vol.54, No1.