「AV強要問題」調査で分かった、女優のギャラ事情と「搾取の構造」

なんと総ギャラの2%という事例も
河合 幹雄 プロフィール

この仕組みのなかで起きる問題は、プロダクションによる女優の搾取である。

ひどい事例をあげると、総ギャラの2%しか女優に渡っていなかった例が知られている。ヒューマンライツナウ(HRN)に駆け込んだ被害者のなかにも2%しか手にしていない例があったそうである。

女優本人が出演内容には同意しておれば出演強要ではないと簡単に言えないと私は考えている。

性行為への同意にばかり注目している人が多いが、根本問題として、人身売買により性を売らされている問題が世界規模で注目されており、報酬の搾取が酷いケースは人身売買に極めて近く重大な人権侵害に該当する。

前述したように、業界の景気は大きく落ち込んでおり、金銭的な搾取事件は増加していると推察される。その場合、女優側から出演強要されたとの主張を誘発していても不思議ではない。有識者委員会に届いた事例でも金銭問題絡みと見えるケースが散見される。

さて、話を戻して、このような慣習をどう変えるかである。

総ギャラを知らずに女優が主体というのは全く無理なので、総ギャラ提示は必須とした。

まず、女優が、プロダクションとマネージメント業務委託契約を結ぶ。その契約書は、これまであったものを土台に有識者委員会とJPGで話し合って改良し、これを業界統一契約書として必ず使用してもらうことにした。

詳細は、AV人権倫理機構としての公式発表をお待ちください。

 

土壇場で辞められる権利

苦労した第二点は、一旦出演承諾していた女優が、当日になって、やっぱり出演したくなくなったときに辞められるかである。

メーカーとしては、監督スタッフを雇い、撮影場所も借りているので、当日になって中止になれば損害が出る。これはバラシと業界では呼ばれており、この費用はおおよそ一回60万円だそうである。

当日になって出たくなくなった場合に、この60万円の費用弁済が求められ、それを払いたくないために出演させられれば、これは出演強要に該当する。

もし、先に出演料を女優が受け取っていれば、その返却は請求できるとしても、土壇場で辞めた時に、それ以上の金銭を請求することは強要に繋がり、禁止事項となる。

考え方は、そうむずかしくない。本人の完全な自由意思がないといけない以上当然である。臓器移植の場合も、準備がスタートして費用が発生してからも臓器提供中止ができる。同じことである。

ところが、これでは女優が気まぐれにドタキャンしてしまうモラルハザードが起きるおそれがある。そのため、バラシが起きた時、数万円でいいから女優から罰金のようなものを取れないかというのがプロダクション側の願いであった。理由はよくわかる。

しかしながら、風俗店などでは平気でやっている、欠勤や遅刻への罰金などというものは、そもそも違法である。

正当な理由なくバラシを起こしたら、せいぜい、次回の報酬を下げるか、皆勤賞のボーナスでインセンティブを与えるか、ドタキャンがどれだけ重大な結果を引き起こすか丁寧にインストラクションするしか方法はない。

有識者委員会は、バラシ代の請求は、なにがあってもできないことを説明し、JPGにはご理解いただいている。

ここでもうひと押し、メーカー側にもバラシ費用の半分をプロダクションに請求しないで負担してもらうことを、対策として盛り込んでいる。

そうすればプロダクションの負担は半分となり、女優に払わせようとするインセンティブは落ち、結果として女優を守ることができるはずである。