AV女優が主体でプロダクションを雇う形で考えていくと、これまでの慣習的なやり方は大幅に変わらざるを得ない。対応に苦労したのは以下に述べる2点であった。
第一は、業界での言葉では「総ギャラ提示」の問題である。
仕組みを説明しながら解説したい。メーカーが映像作品を制作するので、監督、撮影助手、男優、撮影場所等を用意し、プロダクションは女優を連れてくるのが仕事である。
メーカーは業界健全化の意識は高いのだが、最もデリケートな女優の扱いを全てプロダクションに任せきりになっているのが普通である。
時系列順に並べれば、女優がプロダクションと契約し、メーカーが、プロダクションが売り込んできた女優を選択し、メーカーとプロダクションが契約し、女優はメーカーに出演承諾書を出す。
撮影費用はメーカー持ちで、ギャラはメーカーからプロダクションに全額支払われ、その中からプロダクションが女優に出演料を支払っていた。
問題は、メーカーがプロダクションに支払った金額(総ギャラ)をけっして女優に知らせないことが固い慣例であったことである。ここに幾つも問題が発生することは想像に難くない。
誰でも、この総ギャラの相場と、女優の取り分の比率がまず知りたい。このあたりの基本的な状況が把握できなければ何もできない。
このような事態が起きることは、私は、当初から想定しており、業界構成員にアンケートを実施して、他業界なら白書に掲載されるような基本情報を集めさせてくれるかどうか、有識者委員会に参加するかどうか決める段階で打診して了解を得ていた。
おそらく初となる業界アンケート、第一回AV業界アンケート調査を17年7月末に実施し、10月4日の記者会見で報告した。
その調査で、女優の取り分は何割かを尋ねている。その結果は最低4割、5割までがほとんどで最高7割近くの比率で女優に渡っているというものであった。
ただし、これはアンケートに応じてくれた一般社団法人日本プロダクション協会(JPG)のまともなプロダクションのみの数字である。
業界内で言われているのは、ザックリ女優4割、プロダクション4割、経費(スカウト)2割である。女優側も、自分が幾らもらえるか金額は承知している。
女優ごとに大違いの世界であるが、単体と言われる、女優名を押し出して1作品をひとりで撮れる女優なら出演料一本100万円と言われる。
上は、トップ女優の一本300万円、下は、企画女優と呼ばれ、数名で一本つくるか端役で出演するので一本5万の出演報酬である。