中国の「地方」で月1万円生活を送る70歳が見た、あの国の現実

北京には行ったことありませんが…
青山 潤三 プロフィール

そうか、自分は最悪入国禁止になっても構わないけど、中国でお世話になっている人たちに「災い」が降りかかるかもしれない。ここは丸く収めなければ。

筆者「僕が間違っていました。考えを改めます」

係員「そうかそうか、分かったならいいんだ。さっきは少しでも遅れると厳罰と言ったが、たぶん大丈夫だろう。と言っても確約はできない。入管の決定に従うしかないな」

公安局を出て気がつきました。ベトナム行きの最終列車の出発時刻までは、まだ30分弱残っています。

イチかバチか、タクシーに飛び乗って昆明駅へ行き、切符売り場へ走ります。長蛇の列ができているところを、懇願して先頭に入れてもらい、チケットを購入して、最終列車になんとか乗車。そして、国境の事務所が閉まる直前、ギリギリセーフで無事ベトナムへ入ることができました。

 

意外と東南アジアに近い

さて、ここで中国の「地方」の地理を簡単に解説しておきましょう。

台湾とウイグルとチベットについては、あえて触れずにおきます。大陸に広がる、それ以外の「漢民族文化圏」が、一般に日本人がイメージする「中国」だと思います。

中国は大ざっぱに言うと、華北(中心都市・北京)、華東(中心都市・上海)、華南(中心都市・深圳・広州および香港)の3大都市圏と、東北地方、西南地方からなっています。

筆者の主要フィールドは西南地方です。雲南省(省都・昆明市)と四川省(省都・成都市)という2つの大きな自治体に、貴州省(省都・貴陽市)と国家直轄都市の重慶市が加わります。四川省の東北に位置する陝西省(省都・西安市)も関連地域として加えることがあります。

西南地方の大半は、ヒマラヤ山脈やチベット高原へと連なる山岳地帯。四川盆地の大都市である重慶や成都は標高200~500mですが、昆明は1800m、雲南北部の香格里拉(シャングリラ)が3200m、四川西部の理唐(リタン)は4000mを超える「天空都市」です。

過去に泊まった中で最安値(1泊約200円)の雲南省の宿(筆者撮影)

昆明から南東へ進むとベトナム、南西に進むとラオスやミャンマーを経てタイに至ります。ベトナムとの国境までは、バスか列車で5~6時間、運賃1200円ほどです。

町と町(中国では、田舎町と言っても人口30万〜100万人のところが珍しくありません)の間には、のどかというか、早い話「何もない」田園地帯が広がっています。

突然、巨大な道路が…

しかし10年ほど前から、そうした地域に「変化」が起きています。例えば、昆明から南に続く台地の南端付近にある4つの小地方都市(蒙自・開遠・個旧・建水)を結ぶ空間に、6車線も8車線もある、幅の広い自動車道が張りめぐらされ始めたのです。これらの道路はすべて、4つの都市の中間あたりに位置する「鶏街」という寂れた田舎町に繋がっています。

さらに、その間にある区画はマンションやビルで埋め尽くすつもりのようです。そうなれば、ただの田園地帯が巨大都市に変貌することになります。

幅の広い道路と、新築のマンション(筆者撮影)

おそらく、中国政府がこの一帯の開発に急速に力を入れ始めた理由は、前述した通り、ここが東南アジア諸国への「玄関口」となるからでしょう。

北京から見れば、5000km離れたとてつもない辺境の地です。しかし、世界的視野で見れば、アジアの「ハブ」のひとつになるかもしれません。日本におきかえれば、東京よりも九州や沖縄のほうが「アジアに近い」ように。

習近平国家主席が掲げる「一帯一路」構想をひくまでもなく、いま中国は半ば「力ずく」で周辺世界を覆いつつあります。その実態は、中国の田舎になど出かける機会のない外国人にとっては、なかなか想像すら難しいでしょう。

気が付くと、いつの間にか「鶏街」がアジアの中心になっているーーそんな日が近い将来やってくるかもしれません。