中国の「地方」で月1万円生活を送る70歳が見た、あの国の現実

北京には行ったことありませんが…
青山 潤三 プロフィール

「ビザなし滞在」の恐怖

ちなみに、中国にノービザで連続15日以上滞在すると、不法滞在となり処罰されることがあります。これを防ぐためには、必ず15日ごとに国外へ出なければなりません。

華南地方で最も近い「外国」といえば、香港です。一応、中国政府は「香港も中国の一部である」としていますが、いまも事実上の外国で、イミグレーションや税関の通過手続きも、普通に出入国するときと全く変わりません。

興味深いのは、台湾の扱いです。中国から台湾へ行くときのイミグレーションは「国内」扱いなのに、香港からのイミグレーションでは「外国」扱いになっているので、当の台湾の人々はさぞかし戸惑っていることでしょう。

筆者の仕事上の活動拠点は、アパートのある広州ではなく、雲南省の省都・昆明です。昆明からは、バスや列車で手軽にベトナム、ラオス、タイ、ミャンマーなどへ出国できますから、ビザなしでも中国に長期滞在できるのです。

国境地帯でベトナム側から中国方面を望む(筆者撮影)

その昆明で、こんな体験をしたことがあります。うっかり15日目が来たことを忘れていて、気が付いたのは最終日の夕方。慌てて列車でベトナムに向かおうとも考えたのですが、その時間から乗れる夜行列車では、ベトナム到着時刻は日付をまたいでしまいます(夜には当然、イミグレーションも閉まります)。

中国滞在15日を過ぎると、罰則として、1日ごとに500元(約1万円)の罰金を支払わねばなりません。最悪の場合、次回の入国を拒否される可能性もあります。もっとも、1日や2日の超過なら、たいていは見逃してくれるのですが。

それより前に深圳でうっかり数日オーバーしてしまった時は、香港へのイミグレーションに行き、「許してください」と泣きついたら、係員のおばちゃんが笑顔で「気にしなくてもいいよ」とハンコを押してくれました。

でも、いつも担当者が優しい人とは限りません。また中国では、あらゆることが「予測不可能」です。人によって、いや同じ人でも、例えば腹の減り具合とか、その時々の機嫌次第で対応が変わることが珍しくありません。

 

香港に「出国」すればセーフ?

そこで筆者は、慎重を期して昆明の公安局に行き、特例延長許可を請うことにしました。応対したのは、堅物そうな男性係員でした。

係員「うっかりしていた? そんな理由で特別延長などできない」

筆者「そこをなんとか…」

係員「ダメだ、規則通りすぐに国外に出なさい」

筆者「もうベトナム行きの最終列車に乗っても間に合わないんです。国境を越えるのは明日未明になります。それくらいの遅れは構わないですよね?」

係員「たとえ数時間の遅れでも規則は規則だ。罰金と厳罰を覚悟しておきなさい、それがイヤなら、今日中に飛行機で出国すればいい」

筆者「今からでは、国際線のチケットは手に入らないと思いますが…」

係員「なら、香港に飛べばいい。香港行きの便ならまだ沢山あるぞ」

筆者「え? 香港って外国なんですか?」

係員「お前、いまなんて言った?」

筆者「いや、あなたが外国に出ろ、香港ならまだ間に合うって言うから…」

係員「香港は外国ではない。もちろん中国だ。お前も知っているだろう?」

筆者「まあ、一応知ってますけど、われわれ外国人は別の国だと思ってますよ」

係員「貴様、自分の過ちを訂正しろ! でなければ、今すぐここを出て行け!」

筆者「そこまで怒らなくても…みんなそう思っているのは事実じゃないですか」

かたわらに立っているアシスタントMを見ると、真っ青になり、今にも泣きだしそうな顔をしています。