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謎の新兵器「電子戦機」導入を自衛隊が検討する、本当の狙い

「専守防衛」からは実質転換する流れに

年初に報じられた「耳慣れない兵器」

北朝鮮ミサイル問題に進展がないまま、尖閣諸島周辺の接続水域を最新の潜水艦と中国海軍の軍艦が航行し、日本の防衛能力は、まさに岐路に立たされている。

国産の次期防衛兵器は「トランプ・セールス」に完敗状態で、これからはV-22オスプレイを筆頭に、AAV7水陸両用車、グローバルホーク滞空型無人機、陸上型イージス・アショア、長距離巡航ミサイル……とアメリカ製兵器直輸入がメインとなる時代だ。

そんな中、年初の一部報道で、「電子攻撃機の導入検討 政府、電磁波で通信網無力化」(2018年1月1日付、日本経済新聞)といった見出しが躍った。

2018年末に改定する中期防衛力整備計画に、予算を盛り込むことを検討しているという。

取り沙汰されている具体的な「新兵器」がボーイング社の「EA-18G」だ。通称「グラウラー(Growler:「うなる者」の意)」と呼ばれ、ひときわ異彩を放つアメリカ製兵器である。

[写真]ボーイング社製EA-18G「グラウラー」(Photo by GetyyImages)ボーイング社製EA-18G「グラウラー」(Photo by GetyyImages)

グラウラーはアメリカ海軍電子戦機で、F/A-18Fスーパーホーネット艦上攻撃機をベースに開発された。

アメリカ軍の中でも新しい機体で、2009年から配備が始まり、日本でも横須賀第7艦隊に所属する原子力空母「ロナルド・レーガン」の艦載機として、厚木基地や岩国基地に展開している。

オーストラリア空軍にリースしている12機も含めると、アメリカ海軍全体で約100機を保有しているとされる。

 

航空機で「電子戦」を戦うとは、どういう意味か?

さて、この電子戦機だが、みなさんは「電子戦」と聞いて、どのような戦いを想像するだろうか? ハッキングやコンピュータウイルスを用いて、敵のパソコンを破壊するものだとすると、戦闘機といったい何の関係があるのかと不思議に思われるだろう。

実は「電子戦機」についてはトップシークレットとされ、詳しい説明はされてこなかった。ここでは、この「電子戦機」というものを解剖してみたい。

シンプルに言えば、電子戦機は、敵のミサイル基地や軍艦を先制攻撃するのに先立って、敵レーダーや通信機器、コンピュータの電子機器、地対空ミサイルシステムを妨害・攻撃し、無力化にさせるものだ。

その攻撃圏内にあれば、携帯電話も通話すら出来なくなるという。

電子戦機の歴史は古く、ベトナム戦争初期のEA-1スカイレイダーがその嚆矢といえる。以下、EKA-3Bスカイウォーリアー、A-6イントルーダー(Intruder:「侵入者」の意)、EF-111Aレイヴン(Raven:「ワタリガラス」の意)などがあった。

グラウラーの前身といえる電子戦機は、グレナダ侵攻・湾岸戦争・イラク戦争で活躍したEA-6Bプラウラー(Prowler:「うろつく者」の意)とされる。

グラウラーは、AN/ALQ-99戦術妨害装置(TJS)ポッド、AN/ALQ-218(V)2無線周波受信システム、通信対抗手段セット(CCS)を搭載。

メイン装備のAN/ALQ-99は、両翼端に取り付けられた電子戦用ポッドで、ミサイルランチャーのかわりに取り付けられている。このポッドから妨害電波を発信するという。

[写真]飛行中のグラウラーを下から撮影。他ではあまり見られない写真だろう。(提供:US NAVY)飛行中のグラウラーを下から撮影。他ではあまり見られない写真だろう(提供:US NAVY)

電子機器が多く搭載されているので、20mmバルカン砲もオミット(取り外し)されている。つまり、非武装・丸腰の機体なのだ。