年間6000人が安楽死を選ぶオランダ人は「幸せな死」をこう考える

自分の最期は自分で決める
週刊現代 プロフィール

死は決して敗北ではない――。世界の安楽死事情を取材し『安楽死を遂げるまで』を著したジャーナリストの宮下洋一氏もこう話す。

「安楽死に立ち会ったこともありますが、死の前日、みんな笑顔なんですね。余裕を持って、自分で選んでようやく死ねるという喜びが見られた。死ぬ直前に涙する人もいますが、それは悲しみの涙ではない。後悔している様子もないのです」

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生命のある限りはなるべく楽しく過ごし、それが難しくなると潔く死を迎える。この合理主義の極致をいくような発想からすれば、安楽死は「幸福な死」かもしれない。

さらに、そこに拍車をかけているのが、オランダの「個人主義」である。オランダの国民は幼い頃から自分で意思決定する訓練を受けており、その決定については、家族でも口出しできない。前出の宮下氏が言う。

 

「安楽死には、遺された人がどう感じるかという問題も付きまとうが、オランダでは、家族の誰かが安楽死を選んでも、『彼が自分で決めたことならば』と考える人が多い。

私が安楽死をした人の遺族に取材したなかでこんな話がありました。ある男性は心筋梗塞を患った後、75歳で皮膚がん、慢性胃炎となりましたが、どれも致命的なものではなかった。

しかし、認知症の兆候が出ると、その状態で生きていくのは苦痛だと死を選んだのです。死の直前には親戚を25人自宅に招き朝食会を開きました。そこで小さな孫娘までが『寂しいけど、おじいちゃんの決めたことだから』と言っていたそうです」

自分の人生で価値あること、大切なことを徹底的に考え、その延長線上で、「死と向き合う」ことを恐れない。日本にすぐ安楽死を導入するのは難しいかもしれないが、オランダから学べることはたくさんありそうだ。

「週刊現代」2018年2月3日号より

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