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大手ITの働き方を劇的に変えた「リズム・オブ・ビジネス」とは何か

驚異的な売上&幸福度アップと経費削減

「働き方改革」どこから手をつける?

1月22日に召集された第196通常国会の冒頭、安倍晋三首相は今国会の最優先課題として「働き方改革」を挙げた。「人づくり革命」「生産性革命」と合わせてアベノミクス“新3本の矢”に位置付けられるだけでなく、安倍政権が掲げる「1億総活躍社会」「人生100年時代」構想のキーファクターであるようだ。

昨年3月末の第10回働き方改革実現会議で決定された「働き方改革実行計画」によると、具体的なゴールは次のように盛りだくさんになっている。

(1)同一労働同一賃金(非正規雇用の処遇改善、派遣労働者に関する法整備)

(2)賃金引上げ

(3)時間外労働の上限規制

(4)雇用型テレワークの環境整備

(5)女性のリカレント教育などの充実

(6)病気の治療と仕事の両立

(7)子育て・介護と仕事の両立、障害者の就労

(8)転職・再就職の支援

(9)教育環境の整備

(10)高齢者の就業促進

(11)外国人材の受入れ

関係府省の「顔を立てた」とまでは言わないまでも、満遍なく主張を取り込んだために、安倍内閣が本当にやりたいことは何なのか、よく分からない。

筆者のように情報技術に軸足を置く者としては、当然「雇用型テレワークの環境整備」に期待したのだが、1月5日の年頭会見や1月22日の施政方針演説で安倍首相が繰り返し強調したのは「長時間労働の規制」だった。

 

「お決まり」の目標だけでは…

なるほど2017年は図ったように電通、NHK、三信建設(新国立競技場建設工事における大成建設の二次請企業)の過労死問題が大きく報じられ、過重労働・過重責任と低賃金(違法労働・パワハラ・賃金不払い)のブラック企業・ブラックバイトも話題になった。

ほぼ不発のプレミアムフライデーだけでなく、経団連は2016年7月、業務プロセスの見直し・改善、ノー残業デーの徹底と深夜残業の原則禁止、年休の計画的付与など5項目の「働き方改革宣言」を策定している。

IT業界でも、ハードウェアメーカーで組織する電子情報技術産業協会(JEITA)が裁量労働や在宅勤務、仕事と育児・介護の両立支援、テレワーク活用による時間や場所に制約されない働き方などを掲げ、月平均残業時間 20 時間程度、週1日以上のテレワーク比率 50%以上という数値目標を発表した。

しかし、いずれも政府・経済団体の「働き方改革実行計画」を受けたもので、いかにも受け身の印象を拭えない。「働き方改革」のカギとなるIT技術を担う業界が、自らモデルケースとなる覚悟を示すことなく、この程度の改革でヨシとするのは情けない。

ある「驚異的な事例」

「具体的なイメージが湧かない」という向きに紹介したいのは、日本マイクロソフト(東京・品川)のテレワーク勤務制度だ。

同社はそれまでも在宅勤務制度とフレックスタイム制度を実施していたが、2016年5月、勤務場所について「業務遂行が可能な適正な場所」と抜本的に規定を改めた。何時から何時までという勤務時間も規定していないので、つまり「仕事ができるなら、いつでも・どこでもOK」というわけだ。

このために同社は、まず「リズム・オブ・ビジネス」と呼ぶ意思決定の仕組みを作った。営業マンや技術者のレポートをコメントベースの日報でなく、進捗状況を数値やグラフで示すスタイルに変えたのである。

テーマごとに設定した「しきい値」を越えると、プロジェクトリーダーにアラームが発信される。プロジェクトの失敗を未然に察知したり、「もう一息」のタイミングを把握できるようになった。