天皇生前退位をにらんで始まった高級官僚の「ポスト争奪戦」

問題は「誰が一番えらいのか」
長谷川 学 プロフィール

新しい「侍従長」はこれまでより「格上」になる

この三つ巴の「三極鼎立」の力関係は、必然的に、宮内庁の「侍従職」「上皇職」「皇嗣職」となる職員の関係にも反映してくる。

宮内庁のトップは宮内庁長官だが、これは戦前からの伝統により、旧内務省(警察庁、旧自治省、旧建設省など)系の官庁から選ばれることになっている。

現在の山本信一郎長官(旧自治省)の後任には、宮内庁次長の西村康彦氏(元警視総監・元内閣危機管理監)が昇格する見込みだ。

 

そこで最大の注目は、新しい天皇の侍従長に誰がなるかである。前出の官邸筋は、こう指摘する。

「現在の河相周夫侍従長と前任の川島裕氏は、いずれも外務省の事務次官経験者。このことから新天皇の侍従長には、外務省事務次官や駐米大使を歴任した佐々江賢一郎氏が最右翼とされています。

官僚の世界のセンスで言うと、上皇、皇嗣との力関係の観点から、新天皇の補佐役の侍従長は、従来よりも『格』が上がります。この点、河相、川島両氏は外務省の最高ポストの駐米大使を経験していないのに対し、佐々江氏は駐米大使経験者で、両氏よりも格上ということになり、適任なのです。

新天皇家については、健康問題を抱える雅子妃と侍従長の人間関係が極めて重要になるので、雅子妃の外務省北米課勤務時代の上司だった佐々江氏は、その補佐役としても最適です。

しかも佐々江氏は、森喜朗元首相の秘書官を務めるなど政官界とのパイプも豊富で、官邸や霞が関との調整役にも向いていると目されています」

[写真]2013年、駐日大使に決まったキャロライン・ケネディ氏を招いたレセプションで、ケリー国務長官(当時)ら要人を日本大使館でもてなした、当時駐米大使の佐々江氏(Photo by GettyImages)2013年、駐日大使に決まったキャロライン・ケネディ氏を招いたレセプションで、ケリー国務長官(当時)ら要人を日本大使館でもてなした、当時駐米大使の佐々江氏(Photo by GettyImages)

さらに新侍従長は、新たに「三つ巴」の関係となる天皇、上皇、皇嗣の間の調整役を務めることにもなる。

では、肝心の上皇職と皇嗣職のトップに誰が就任するのかだが、実はまだ固まっていない。

とかく、新しい組織やポストができるときには、その権益を巡って官僚たちの「仁義なき戦い」が水面下で勃発するのが常だ。一度、新ポストをおさえれば、それが「前例」となって以降も自分の省庁が権勢を発揮できるとなれば、なおさらである。

皇室を巡る人事は今後、政官界最大のテーマになることは確実。実際の人事は来年になるが、関係省庁間の人事を巡る暗闘の火ぶたは、すでに切られている。