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立憲民主「公務員人件費カット」は胡散臭いと言える、これだけの理由

嗚呼、この「二枚舌」よ…

問題なのは「比較先」

2017年末に立憲民主党は基本政策を発表したが、そのなかで「公務員人件費カット」という項目がある。

立憲民主党は「公務員の労働基本権を回復し、労働条件を交渉で決める仕組みを構築するとともに、職員団体などとの協議・合意を前提として、人件費削減を目指します」と公式ツイッターで発表している。一見、国民としてはありがたい政策に見えるが、はたして実態はどのようなものなのか。

この発表を整理して読むと、(1)労働基本権の回復、(2)労働条件の労使交渉、(3)人件費削減と3つのポイントに分けられる。

労働基本権とは、団結権、団体交渉権、争議権のいわゆる「労働三権」を示すものである。現在公務員については、団結権はあり、公務員労組を持っているものの、団体交渉権は現業公務員を除き認められておらず、争議権も認められていない。つまり、(1)労働基本権の回復とは、団体交渉権、争議権の獲得を目指すことを公務員労組に訴えかけるものである。

労働基本権に制約がある公務員の不利益を解消するために存在するのが人事院で、給料に関しても人事院が定める。だが、(1)が達成されれば人事院の必要性はなくなり、給料は(2)の労使交渉で決めることになる。つまり公務員が自主的に賃金の交渉をすることになるわけだが、労組が入れば当然賃上げが進む。一般企業を考えれば当たり前のことで、そうすると(3)人件費削減には帰結しない。

冷静に考えると整合性が取れていないこの3点セットは、旧民主党時代からあった。立憲民主党は公務員労組の顔色をうかがって(1)を言うが、公務員の給与を上げると国民からの支持が得られない。だから(3)を最終的な政策として掲げる「二枚舌」を使ってきたのだ。

そもそも人事院は、官民の比較によって公務員の給料を決定している。この時比較対象になるのは「職種別民間給与実態調査」から得られるデータだ。50人以上の民間の事業所約5万5000ヵ所が対象になる調査だが、実はその調査対象は大企業ばかりだ。

5万ヵ所以上となるとかなりの数に思えるかもしれないが、これは全国約560万におよぶ事業所のうちわずか1%にすぎない。つまり、民間のトップ1%だけを調査対象として、その事業所の給与を国家公務員に適用するのだから、相対的に国家公務員の給与は高くなってしまうのだ。

 

ちなみに、民間給与の統計については人事院の調査のほかに、事業所規模5人以上を対象とする厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」、事業所規模1人以上を対象とする国税庁の「民間給与実態統計調査」もある。もし国税庁の統計を使えば、国家公務員人件費は2割程度減少してしまうというのが筆者の見立てだ。

この事実は、立憲民主党にとってはとても都合の悪いものだ。本当に給与がカットされることになれば、公務員や関連団体の支持を失うことになるからである。

もし本気で公務員労組の顔を立てるのであれば、むしろ給料アップを図ったほうが都合がいいはずだが、それもできない。つまるところ立憲民主党はこの矛盾を解消できないまま、見切り発車を決め込んで政策を打ち出してしまったのだろう。

『週刊現代』2018年2月3日号より

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