「AV出演強要」何が問題だったのか?有識者委員会メンバーが明かす

女優たちが本当に望んでいたこと
河合 幹雄 プロフィール

女優の自己決定権の擁護という目標

配信停止の問題にまず取り組んだことを述べたが、出演強要問題を放っておいたわけではない。

並行して契約書の統一等の検討を行った。その方針だが、その最低目標は、女優が性行為を強要されないようにするということであるから、業者側が強要する行為を無くせばよいと理解している方がおられるかもしれない。

委員会が考える最低ハードルはそれよりも高い。やるべき目標は、女優の自己決定権の擁護である。

これが理想であることは、わかるとしても、一般論として、どの業者も変化は最小限にしたいのが常である。業界がそこまでついて来てくれるのか疑問に思うのは当然である。

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ところが、そのような呑気なことが言っておられる情勢にはないと判断せざるを得ない状況にある。理由は、労働者派遣法による有罪判決である。

以下、説明しておこう。

そもそもAVとは合法なのかというところから始めれば、いくつかの法規が問題となる。

一番有名な刑法175条のわいせつ物領布罪についてはモザイクが十分かどうかの判断となるが、これについては、今回は別問題ということが男女共同参画会議の動きから読み取れる。

第二に売春防止法がある。売春する行為は犯罪ではないが、させる行為とそれに協力する家屋の提供などがあれば犯罪となる。

これについては、性行為の対価として金品を受け取っているかが問題となるが、女優は、性行為の数で報酬をもらっておらず、熟練すれば報酬が上昇するし、男優は金銭を払って行為するのではなく報酬を受けて行為している。

普通に考えて、女優の報酬は出演料金ということになる。AV撮影を装った売春事件ということは有り得るが、一般的なAV撮影が売春という解釈はかなり無理がある。

そうだとすれば、出演強要は何罪になるのか。強要の程度が暴力的だと強姦罪、強要罪だが、そうでなければ刑法犯には問いにくい。

 

ところが、労働者派遣法58条は、「公衆道徳上有害な業務」に派遣すると最高懲役10年と規定する。

既に2016年の判例は、AV出演を有害業務と認めており、プロダクションが女優を雇用してAV作品に出演させれば、この条文にひっかかる。

それを回避するには、女優が主体となって、プロダクションを雇うしかない。その結果、女優の自己決定権を完全に認めなければならないわけである。