田舎で「不倫」すると、知り合いだらけでデートもままならない現実

A子とB子の複雑な感情【19】
鈴木 涼美 プロフィール

「めっちゃかっこいい歯医者さんいて、でも普通に検診したらそれで終わるじゃん。行った時混んでたし。で、その人院長じゃないから毎日いるわけじゃないっぽくて、でも子供に虫歯なかったから、もう歯医者いく用事ないじゃん。イケメンに自分の口のなか見せるのはちょっとやだし、私も虫歯ないし。

で、たまたまぶっちゃけ話もできる一番仲良しのママ友がそこの歯医者通ってたから、連絡先書いた紙を渡してもらったの。そしたらすぐに連絡きて、今度ご飯行きましょうって」

遠くの元カレよりも近くの歯医者

元カレよりさらに顔が好みで、なおかつ3つ年下の彼は、独身で実家暮らしだった。最初のデートは中心部にあるホテルのレストランで、その日のうちに、彼女はかなりしっかり恋に落ちていた。お互いの家で会えないことがわかると、デートは至難の技となった。

「ホテルであってエッチするだけっていうのは嫌だけど、ドライブしてたって誰が見てるかわかんないし、ちょっとお茶飲むとか危険すぎる。東京人にはわかんないだろうけど、本当に秋田とかもはや住民みんな全部親戚なんじゃないかくらい狭い世界だから。

 

一回、わざわざ車も後部座席のって、20キロ離れたカフェ行ってお茶してたら、その歯医者の患者さんに会った上に、うちの子供と同じ小学校の親に会っちゃって、入学式で私の顔見覚えあったらしくて、その歯医者に治療に行った時に、もしかして○○小学校の子供のお母さん? とか言ってたらしくて、もう死んだかと思ったよね。歯医者が、違いますよって言ってくれたからなんとかごまかせたけど、生きた心地しなかった。

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旦那とか、私が浮気してるとか、一秒も疑ったことないと思うし、バレたら絶対離婚される。これから小学校の行事とか、その会っちゃったお母さんに気づかれないように全部伊達メガネで変装しなきゃいけないし、デートは30キロ以上離れてもっとすごい変装しなきゃいけない」

そこまで大変なら、ちょっとした恋の楽しさは東京の元カレだけに託せばいいような気もするが、「遠くの元カレより近くの歯医者でしょ」という彼女は、元カレの連絡を待って切ない気分になる時間はぐっと減ってしまったらしい。小学校のバザーの際に着用する予定の伊達メガネを見せてもらったが、AVの女教師モノのような赤フチが不自然にエロティックで、ちょっと間抜けだった。

〈次回に続く〉

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