首都圏不動産「バブルの正体」が分かった

寿命100年時代のマネーシフト⑦
加谷 珪一 プロフィール

一方で、異様なまでの伸びを示しているのが債券である。これはいうまでもなく日本政府の財政悪化によって大量の国債が発行されたことが原因であり、現在、日本にあるマネーの大半は国債に流れ込んでいる。

日銀が量的緩和策を導入したことで、価格が高騰した国債をさらに高値で買い上がっているという事情はあるものの、客観的に見れば、現在の債券市場は相当なバブル相場である。

債券価格が今後も継続的に上昇すること(つまり金利は低いままで、デフレ傾向が続くこと)について誰も疑いを持っていないという点においても、まさにバブルの要件を満たす。価格の上昇を誰も疑わなくなった時がバブルの頂点であるというのは多くの人が認識しているはずだ。

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港区や千代田区で子供が急増

少し皮肉めいた話をしたが、筆者がここで論じたいのは国債バブルの話ではなく、マクロ的に見て不動産価格はほぼ下がり切った状況にある、という現実だ。株価がこれほどの復活を遂げているにもかかわらず不動産価格がボロボロなのは、日本の人口動態を反映しているからである。

今後、日本は本格的な人口減少時代に突入し、多くの住宅やオフィスが余剰となる。不動産価格の不振はこうした状況を織り込んだ結果と解釈するのが自然だろう。首都圏における価格高騰はこうした中で発生した現象であり、もしそうなら、今後の価格動向を決めるのは首都圏の人口動態ということになる。

人口が減るということは、同じ人口分布のままで人の数だけが減ることを意味していない。人は経済活動を行って生活しているので、一定数以上の人がいないと経済圏を維持することができない。このため人口が減ってくると、より便利な場所に向かって人が移動することになり、人口動態が大きく変わってしまうのだ。

具体的には地方から東京への人口シフトを促すことになり、人が増える東京では引き続き不動産需要が継続することになる。この動きは「東京」対「地方」という図式にとどまらない。

地方の中でも「地方中核都市」と「その他の地域」、東京の中でも「23区」と「郊外」、さらには23区の中でも「都心」と「その他の地域」といった具体に、一種のフラクタルのような形状になっている可能性が高い。

例えば、東京都内でも郊外といわれるエリアと都心エリアでは人口動態が大きく異なっている。東京は地方から人が移動しているので、すべての区で人口が増えているが、過去5年間を見ると、もっとも増加率が高いのは中央区(24.4%)千代田区(23.2%)、港区(19.6%)で、世田谷区(同6.2%)や練馬区(同4.1%)を大きく引き離している。

 

また15歳以下の人口増加に至っては千代田区、中央区、港区のいわゆる都心3区は圧倒的で、多くの子育て世代が都心に流入していることが分かる。

つまり日本全体としては人口減少が進んでおり、それを反映して不動産価格は下落の一途だが、東京だけは別格で、人口が増え続けている。都心3区や都心に近い台東区や江東区では2ケタ台の人口増加が継続しており、この状況をベースにすると、マンション価格が3割値上がりしたという話もあながち不自然とはいえない。

おそらく地方中核都市でも同じ現象が発生しているはずだ。利便性を重視して、郊外から中心部に移り住む人が増え、全体として不動産価格は下落しているものの、中心部の物件だけは値上がりしている可能性が高い。