廃校危機の女子校を救った校長が語る「人を動かす4つの法則」

制服改革はこうして進められた
漆 紫穂子 プロフィール

味方を作る努力も大切ですが、敵をつくらない努力も大切です。「目的のためには、嫌われても構わない」という人もいますが、それは、改革への目的意識が低いことだと、今は思うようになりました。

改革をしようなどという人はそれだけで充分嫌われますので、必要以上に嫌われないこと。敵をつくると前に進むスピードは大幅にダウンします。

若いころ、100パーセントを目指し、みんなが動いてくれないとイライラしていたら、
「組織はゆるく結びついて、前にさえ進んでいればいいんだよ」と教えてくれた人がいました。全員が快く協力するようなことはまれで、むしろ組織の多様性を考えると危ないことともいえるかもしれません。

機関車のように全体をけん引する車両、引っ張られてついて行く車両の両方で前に進んでいけばいいのです。

人を否定して、誰かのプライドを傷つけたり、仲間外れをつくったりすれば、列車を逆方向に引っ張るもう一つの先頭車両が生まれます。そうなると、動きは止まってしまいます。

事を成そうと思ったら、組織のベクトルを合わせることが大切なのです。

 

前へ向かって、みんなで進むためには、「自分が正しい」という思い込みを捨てること。私の場合、「これは自分が好きでやっていること」と思うようにして、

「5分間だけ、手を貸してもらってもいいですか?」

とお願いするようにしました。

5分間のお願いを断れる人はなかなかいません。ほとんどの人は、

「しょうがないなあ」

と手伝ってくれました。

正面から「これはやるべきこと」と言われれば拒否反応が起こりますが、隣に座って同じ作業をすると、不思議と心の壁が低くなりました。

そして、その結果うまくいくと、「では、もう1回手伝ってあげようか」という感じになり、だんだんと協力してくれる人が増えていったのです。

リーダーとして、人に協力してほしいのであれば、正しいことほど大きな声で言わないこと。「命令」より「お願い」という態度で臨むくらいがちょうどいいのではないでしょうか。

漆紫穂子(うるし・しほこ)
1925年創立の中高一貫校・品川女子学院の6代目校長。2017年、理事長・校長に就任。早稲田大学国語国文学科専攻科終了。同校で提唱しているのが「28プロジェクト」。28歳をゴールにして目標から逆算することで、自らのモチベーションを高め潜在的な能力を引き出し、自立する人になる。このライフデザイン教育が各界から注目されている。実際に経営危機だった同校の改革を7年でやり遂げ、偏差値を20ポイント以上アップ、入学希望者を60倍に跳ね上げた。その経験を踏まえて次世代にシェアしようという気持ちを込めて書いたというのが、今回の「人が動かない4つの理由」も書かれている『働き女子が輝くために28歳までに身につけたいこと』。「娘のためにと思って買ったら自分に大変参考になった」「私が高校生や大学生の頃に読みたかった」という声が続出の、稀有なビジネス書といえる。