廃校危機の女子校を救った校長が語る「人を動かす4つの法則」

制服改革はこうして進められた
漆 紫穂子 プロフィール

人には「現在のことが大きく見え、未来のことが小さく見える」という「現在バイアス」がかかります。面倒なことを先延ばしにするのもそのためです。
それを回避するためには、ゴールをイメージし、そこに身を置いて、未来と現在を同じ大きさで見るようにするのです。

面倒くさいから嫌だなということは誰でも感じることでしょう。

「このセミナー、勉強になりそうだけど、今は忙しいからなあ」

「この仕事、引き受けたら喜ばれるけど、手間がかかりそう」

と躊躇するようなとき、私は自分にこう問いかけます。

「これが終わった翌日は、どんな気分?」

そうして、やり終えた翌日のことをイメージしてみるのです。

すると「できることが一つ増えるな」「みんなが喜ぶだろうな」と、一歩が出やすくなります。

制服の改革はスピードが大切でした。ひと月遅れれば新入生に間に合わず、翌年おくりになってしまいます。プロジェクトチームは若手が推進、ベテランがバランスをとりました。生地から自分たちで探す大変な作業ではありましたが、100パーセントの準備ができるのを待たずに行動し、そこから修正していけばいいという「6割GO」を合い言葉に、とにかく一年でも早く「子どもたちを喜ばせたい」という一心ですすめました。

現在の制服。1990年のときからは素材や色など、微妙に変更したところもある。できるだけ早く完成して生徒たちを喜ばせたい一心だった。写真提供/品川女子学院

「プロセスを見る」「ゴールを見る」は、どちらも大切です。自分とチームメンバーの考え方の違いを知って活かし合うことで、よりよいものが生まれてくるのです。

本当はなにが困るかを知る

理由 責任を取りたくない

人が動かない理由の三つ目は、「責任を取りたくない」というもの。自分が賛成したことが失敗し、責任を問われたらと思うと怖くなるのが当たり前です。

学校改革のときに提案したことは、ほとんどが成功する保証のないものでしたので、「こんなことがあったらどうする」「あんなことがあったら誰が責任を取るのか」と、心配の声や反対意見が多く出ました。

一方、私にはこのまま動かない方がリスクと感じられ、もし、うまくいったらという「絵」が見えていました。

このように「リスク回避志向」の人と「成果志向」の人も、理由②でお伝えしたように、違う絵を見ているのです。そして、違う絵を見ている人間同士が話しても、話は平行線になりやすい。そんなときは、「これが絶対いいに決まっている。自分の意見が正しいのだ」と信じる気持ちをいったん横に置いて、「相手の目には何が映っているか」と考え、その絵を、相手と同じ側に回ってみるようにしました。

 

そのうえで、責めたり、説得しようとしたりせず、

「本当は何が困るの?」

と聞いていくと、

「実は失敗したとき、自分がクレームを受けるのが怖い」

などと本音で話してくれる人も出てきました。そこで、その人にとってのリスクをどう回避しつつゴールに向かうかを、一緒に考えることができるようになったのです。