思わず大量に買いすぎてしまって、賞味期限が切れそうな納豆がたくさん残っているという場合は、冷凍すれば、それほど品質を損なわずに長期保存することができる。
全国納豆協同組合連合会の緒方則行氏はこう解説する。
「賞味期限が来る前に冷凍すれば、栄養は損なわれません。しかし、水溶性のビタミンが多少抜けてしまうのと、食感が失われてしまうのは否めません。
冷凍したものは、冬場なら8時間、夏場なら6時間ほど常温で解凍してから食べるといいでしょう。時間がある場合には冷蔵庫で10時間くらいかけて解凍するといい」
続いて食べる「量」はどうだろうか。納豆は1パック当たり30~50g程度で、約90だ。
「私は1食につき1パックを食べることを勧めています。納豆はカロリーも高すぎず、タンパク質、ビタミンが豊富なので、1日3パックくらいなら栄養過多になることもありません」(前出・須見氏)
しかし、多くの人が食べるのは、1日に1パック程度だろう。そうした場合、1日のうちどの時間帯に食べるかがポイントとなる。
朝に食べるのか、それとも夜がいいのか。
「夜がオススメです」と言うのは前出の麻生氏。納豆に含まれるナットウキナーゼには、血栓を溶かす力がある(第1部参照)。
このナットウキナーゼが働き始めるのが食後4~8時間くらい経ってからだが、ナットウキナーゼは睡眠中のほうが働きやすいのだ。
さて、納豆を混ぜる段に入る……とその前に、もうひとつ注意しておくべきことがある。冷蔵庫から納豆を取り出すタイミングだ。
重要なのは、食べる前に冷蔵庫から取り出して30分ほど常温で置いておくこと。納豆菌は非常に強力なので、短時間のうちにも増殖し、腸内に届く菌の量も倍増するのである。もちろん腸内環境を整える効果はいっそう高くなる。
こうしてようやく納豆を「混ぜる」準備が整った。何に気を付けるべきなのか。麻生氏が続ける。
「混ぜる回数は好みによりますが、『粘り』をたくさん出すことには意味があると思います。粘りはポリグルタミン酸という物質でできていますが、これは、胃壁を守ったり、腸管では老廃物の排出を促進したりしてくれるのです」
体にいい「粘り」を出すためには、いくつかコツがある。ひとつは「混ぜる回数」だ。
「20回程度が普通だと思いますが、もっと混ぜたほうが断然粘りが出やすくなります」(麻生氏)
本誌記者が試してみたところ、100回程度で白っぽい粘りが全体に行きわたり豆同士がなかなか離れないという状態になった。200回では粘りが泡だったようになり、滑らかな口当たりに。
300回では粘りの量に変化はなかったが、粘りにうまみが加わるような感覚があった。
しかし、500回を超えたあたりから納豆の粒が潰れ始め、口当たりがベチャベチャして悪くなった。味との兼ね合いも考えて好みの回数を見つけるのがいいだろう。
もうひとつ、混ぜる際の「順序」も大切だ。
先にタレや醤油、カラシを入れてからかき混ぜてしまうと、ポリグルタミン酸が水分と吸着してしまい、粘りが生まれにくい。先にかき混ぜてからタレを入れることで、粘りが増える。
一度混ぜた後にタレを入れることで、口当たりがよくなり、うまみを感じやすくなるというメリットもある。
混ぜる「向き」については、時計回りであろうと、反時計回りであろうと変化はないので、左利きの人も安心してほしい。ただし、途中で混ぜる「向き」を変えないことが大切。方向を変えると、うまみの成分が壊れてしまうからだ。