いつの時代でも「若者の叩き方」を提示する、社会学者たちの功罪

問題を煽り、政府や広告代理店と共謀
後藤 和智 プロフィール

それでは、「パラサイト・シングル」と「パラサイト」(出現数は表1を参照)という言葉が使われている言葉のイメージは山田の中においてどう変化したかについて、このいずれかの単語が使われている段落を対象とした共起ネットワークで見ていきます(共起ネットワークの分析単位はすべて段落)。

分析の対象とするのは分析の対象とした書籍全体(図1-1)、『パラサイト・シングルの時代』のみ(図1-2)と、その16年後の著書であり、「シングル」全体を問題化した『「家族」難民』(図1-3)、及びこの2冊を除いた書籍(図1-4)です。

図1-1

図1-1を見ると、やはりこの2単語の周りには、「親」「同居」「未婚」という言葉が並んでいて、「親に同居する未婚の独身者」という「パラサイト・シングル」概念の基本を見ることができますが、全体の分析においても「リッチ-生活-送る」「消費-ブランド」などといった「消費」を中心とするマイナスのイメージに繋がる言葉が繋がっています。

図1-2

これを『パラサイト・シングルの時代』だけ(図1-2)で見ても同じようなことが言えます。

これが『「家族」難民』になると、「親と同居する独身者」の親子の高齢化などを示唆するような繋がりも見えますが、内容としては親子関係に関するものが中心であるようです。

図1-3
図1-4

この2著作を抜いた場合は、やはり消費に関するものが中心になっています。

藤田孝典は『貧困世代』(講談社現代新書、2016年)の中で、いまや子供を親が支えることができなくなったということを、仕送りの量の減少などを用いて示しています。

 

そもそもライフコースの不安定化については佐藤俊樹の『不平等社会日本』(中公新書、2000年)が、若者の貧困化については宮本みち子の『若者が《社会的弱者》に転落する』(洋泉社新書y、2002年)などで話題になったはずです。

それでも「フリーター」「パラサイト・シングル」を「自ら進んで不安定になっている存在」として語っている山田自身が、「パラサイト・シングル」などの概念を使って若い世代の現状を先送りしている存在に他ならないのではないでしょうか。