いつの時代でも「若者の叩き方」を提示する、社会学者たちの功罪

問題を煽り、政府や広告代理店と共謀
後藤 和智 プロフィール

統計学で解き明かす山田昌弘

前置きが長くなりましたが、今回はそんな山田の言説の移り変わりを、計量テキスト分析を使って明らかにしていきます。

『パラサイト・シングルの時代』『「婚活」時代』がそうであるように、山田が活躍した舞台は新書を中心とした廉価な出版メディアでした。

これは三浦展や香山リカなどにも共通して見られる者です。そのため本書の分析は新書と、文庫になった書籍を中心に行いました。分析に用いたものは次の13冊です(書籍についてはすべて分析者自らがデータ化処理を行った)。

『結婚の社会学』丸善ライブラリー、1996年
『パラサイト・シングルの時代』ちくま新書、1999年
『パラサイト社会のゆくえ』ちくま新書、2004年
『希望格差社会』筑摩書房、2004年(ちくま文庫、2007年)
『新平等社会』文藝春秋、2006年(文春文庫、2008年)
『少子社会日本』岩波新書、2007年
『「婚活」時代』ディスカヴァー携書、2008年(白河桃子との共著)
『幸福の方程式』ディスカヴァー携書、2009年(電通との共著)
『ワーキングプア時代』文藝春秋、2009年(『ここがおかしい日本の社会保障』に改題して文春文庫、2012年)
『なぜ若者は保守化するのか』東洋経済新報社、2009年(『なぜ若者は保守化したのか』に改題して朝日文庫、2015年)
『「婚活」症候群』ディスカヴァー携書、2013年(白河桃子との共著)
『「家族」難民』朝日新聞社、2014年(『家族難民』に改題して朝日文庫、2016年)
『モテる構造』ちくま新書、2016年

分析には主にフリーのテキストマイニングソフト「KH Coder」(http://khc.sourceforge.net/。また、ソフトの詳細については、樋口耕一『社会調査のための計量テキスト分析——内容分析の継承と発展をめざして』(ナカニシヤ出版、2014年)を参照されたい)を用いました。

また形態素解析エンジンは「MeCab」を使い、「パラサイト・シングル」(一般名詞)「パラサイト」「婚活」(サ変名詞)をそれぞれユーザー辞書として登録しました。

 

「パラサイト・シングル」概念の変化

まず、最初に見るのは、山田における「パラサイト・シングル」概念の変化についてです。

山田の出世作となった『パラサイト・シングルの時代』においては、親に「寄生する」若い未婚の男女(特に女性)が消費文化を謳歌することが様々な社会不安を生み出しているかのような描写をしていました。

2004年に出た『希望格差社会』においても、そのようなイメージは保持されているように見えます。

親にパラサイト(寄生)できて収入が少なくてもリッチに生活できる若者と、自立しているためにぎりぎりの生活を強いられる人との格差など、「立場(ステイタス)の格差」が出現していることが重要なのである。(p.24)

運に頼る人間とは、競馬などギャンブル好きの人間のことではない。自分の人生自体をギャンブル化してしまう人間のことである。8章で詳細に分析するが、その典型的な例を「フリーター」や「パラサイト・シングル」に見ることができる。アルバイトをしながら夢を追いかけるフリーターは、夢が実現しなかった時のことを考えない。高収入の男性と結婚できることを信じて、リッチなパラサイト生活を送る未婚女性は、結婚できないケースを想定しない。彼らが「運悪く」就職できなかったり、結婚できなかったとき、彼らに救いの手を差し伸べる人はでてくるのだろうか。(pp.61-62)
(引用はどちらも『希望格差社会』のちくま文庫版から)