皆様は、論壇において一時代を築いた「社会学者」と聞くと誰を想像するでしょうか。
私の文章を読んでいる方なら、恐らく少なくない人が「宮台真司」と答えるかと思います。
宮台は、1990年代にいわゆる「ブルセラ論争」から1995年のオウム真理教事件、1997年の「酒鬼薔薇聖斗」事件、そして1998年の栃木県の教師刺殺事件など、そのときどきに手を変え品を変え、若い世代の「問題行動」を採り上げて、「いまの社会はこうだ」というものを提示してきました。
あるいは、若者の労働問題に関心のある人なら、私も名を連ねている『「ニート」って言うな!』(光文社新書、2006年)の著者のひとりである「本田由紀」、フェミニズムなら「上野千鶴子」、もしくは2010年代以降「若者代表」として売り出した「古市憲寿」などを挙げる人もいると思います。
ところで、「パラサイト・シングル」「希望格差」、そして「婚活」という言葉が、同じ社会学者によって作られた、もしくは広められたことをご存じでしょうか。
いずれも1990年代終わり〜2010年代における若い世代の現状を示す言葉として流通しました。その社会学者とは、山田昌弘・中央大学教授です。
これらの言葉が流行したことが示すように、山田はコピーライター的な能力の非常に高い社会学者と言えます。実際、Wikipediaには山田の肩書きとして「日本の社会学者・コピーライター」と書かれているくらいですから(2018年1月18日閲覧)。
山田が公式でコピーライターを名乗ったことは寡聞にして知りませんが、少なくとも近年の若者論における、一人のコピーライター的な存在として活躍したことは論を俟たないと思います。
一昨年、私は「現代ビジネス」に「マーケティング化する「若者論」の罪〜キャッチーに切り取れ、そうすれば金になる」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48919)という文章を寄稿しました。
そのなかで、近年の若者論は、三浦展や原田曜平に代表されるマーケッターによって支配されていることを指摘しました。これらのマーケッターの態度は、三浦が次のように語っているようなものです。