「アマゾンなしでは生きられない世界」で、人間は幸せになれるか

2022年を見据えたひとつの問い
週刊現代 プロフィール

国家よりも強い経済圏に

もう一つ、アマゾンが今後、手を伸ばすと考えられているのが金融の分野だ。その素地はすでにある。

「アマゾンが独自の通貨を発行し、アマゾン経済圏のなかではその電子マネーを使うようになるかもしれません。これは販売から配送までを自社で完結できるアマゾンだからこそできることです。

これならば手続きが複雑で認可までに年数を要する銀行免許も必要ありません。国というシステムとは別枠の一つの経済圏が出来上がるのです」(前出・松岡氏)

さらにアマゾンが銀行に代わってメーカーにカネを貸すことも可能だ。人気商品を把握し、物流を握るアマゾンであれば、商品の売れ行きを見てメーカーの財務状況を推測することができる。メーカーへの支払いを前倒しして、運転資金を与えてやることもできる。

アマゾンは流通、販売、個人情報をすべて管理する巨大帝国となり、そのなかで人々は生活を強いられ、アマゾンなしでは生きていけない世界になる。だが、それは本当に喜ばしいことなのか――。

 

不安材料もある。それは「アマゾン一強」になったがために価格競争がなくなり、すべての値段の決定権をアマゾンに握られることだ。

前出の松岡氏は「アマゾンが自分たちの利益を価格に上乗せする可能性はある」と語る。

「これまでアマゾンは商品をどこよりも安く提供することで、シェアを拡大してきましたが、競争相手がいなくなれば、値段を抑える必要もなくなります。石油のように価格決定権を握られ、それに従わざるを得ない日が来るかもしれません」

もう一つ懸念されるのが個人情報の問題だ。前述したように「その人のためだけのサービスをアマゾンは提供してくれる」と言えば聞こえはいいが、これは一方で、アマゾンに行動から嗜好まで、すべての個人情報を吸い上げられ「丸裸」にされることでもある。

アマゾンエコーで話した内容もすべて記録され、マーケティングデータとして活用されていく。考えようによっては恐ろしい監視社会になるとも言える。

アマゾンが国家よりも強い影響力を持つことについて、米国では批判の声も少なくない。便利さを追求するあまり、誰も逆らうことのできない巨大な帝国を自分たちの手で作ろうとしているのだ。

「週刊現代」2018年1月27日号より