登校拒否などの問題を心配した母親は、学校に相談。すると担任教師以外にも、「内部監督者」(Intern begeleider)と呼ばれるポジションのスタッフが親身に相談に乗ってくれたという。この「内部監督者」は生徒に対するケアの方針決定、調整、実施や教師の監督などを行う役職で、教師と生徒・保護者の仲介も行う。

そして3年生前期の期末試験の結果も明らかに4年生相当の学力を示していたので、本格的に4年生への飛び級プロジェクトが始まったとのだとか。けれど一足飛びに「今日からこの学年で勉強するのよ」と環境をがらっと変えるのではなく、1日2時間だけ新しいクラスで勉強するという流れから始めていったそうだ。

女児本人は4年生の勉強内容に興味を持ちつつも、「ついて行くことができないんじゃないか」と不安を覚えてもいたという。しかし1日2時間だけの参加という柔軟性のある対応をしてくれたお陰で、2週間後にはすっかり自信をつけ、満を持して4年生に本格移行したのだ。

筆者の娘がその4年生のクラスに転入していったのは、まさに女児の移行期だった。これは余談だが、「自分以外にも、新しくクラスに入ってきた子がいる」ということも、女児の不安解消に一役買ったのではないかと感じている。

右から筆者の子供、飛び級の女児、一般のクラスメイト。学校の展覧会イベントでの一枚。写真/倉田直子

そして飛び級が完了した後も、学校から女児に対するフォローアップは続いている。1年以上たった今でも、8週ごとに内部観察者と女児の保護者との間に面談が設けられるのだという。彼女のクラスでの適応はもちろんのこと、能力に見合った挑戦ができているか話し合われるのだ。

そんなきめ細やかなケアの甲斐があり、女児はすっかり今の学年に馴染み、「もう元の学年には戻りたくない」と言っている。けれどそれは元クラスメイトたちとの分断ではなく、今でも彼らと一緒に遊ぶこともあるのだそう。飛び級は、むしろ彼女の交友関係を2倍に広げたと言ってもいいのではないだろうか。

「飛び級する生徒が社会的かつ情緒的な発達に影響を受けるのではないか」という懸念は、オランダ国内でも頻繁に言及されている。ただしオランダ政府の調査では、これらの懸念に対する強い科学的証拠はないと結論付けられている。

成績優秀なだけでは飛び級しない

どんな時に飛び級を勧められるのかというと、年2回の学期末テストや、日ごろの生活態度などを見て提案がなされることが多いようだ。前述の女児のように、保護者から学校に打診することもある。ただし、成績が優秀でも、本人が上の学年でやっていかれるほど生活面で成熟していなければ見送られるという。