国家破産は、これさえ守っておけば全然怖いことではなかった

慌てる必要はありません

結局、インフレは無理だった

一般的に資産運用関係の書籍は、株式や為替市場の変化によって文庫化に適さないのですが、『国家破産はこわくない』では親本の記述をほぼそのまま踏襲しています。これは私に先見の明があるということではなく(そうだったらよかったのですが)、本書が前提としている経済条件がほとんど変わっていないからです。

日銀の黒田東彦総裁は「2年で2%の物価上昇」をコミットメントし、大規模な金融緩和に乗り出しましたが、5年ちかくたった現在(2018年1月)でも物価が上昇する兆しはなく、リフレ派が強硬に主張していた金融緩和政策ではインフレを起こすことができないことが事実によって証明されました。

コミットメントとは「結果がともなわなければ責任をとる」ことで、リフレ派の経済学者は白川方明日銀前総裁を「デフレ脱却にコミットしない」と罵倒していましたが、黒田総裁はもちろん「リフレ派の首領」と呼ばれて副総裁に就任した経済学者も、自身のコミットメントが達成できなくても責任をとる気配は毛頭なく、任期をまっとうするつもりのようです。

近年の心理学は、「高い知能は現実を客観的に認識して正しい判断をするのに役立つのではなく、そのもっとも重要な機能は自己正当化である」ことを明らかにしましたが、これはそのことがとてもよくわかるケースでしょう。

 

国民の「満足度」は高いけど

その一方で、幸いなことに、一部の経済学者や財政学者が警告していたような国債の暴落や財政破綻も起きていません。そればかりか少子高齢化による人手不足もあって、失業率は2.8%とほぼ完全雇用の状態で、求人倍率は1.52倍でバブル最盛期を上回り、大学生の就職内定率も9月時点で9割を超えています。

その結果、内閣府の調査(2017年8月)では、現在の生活に「満足」とこたえたひとが73.9%と過去最高になりました。

アベノミクスの5年後の評価は、「金融緩和は効果なかったものの、景気回復にはそれなりの成果はあった」ということになるでしょう。

そうはいっても、このまま将来もずっと安泰とはとうていいえません。

リフレ派が妄想していたような「日本経済大復活」は難しそうで、超高齢社会で社会保障費が膨れ上がっていくにもかかわらず消費税増税は先延ばしされ、増税してもその財源は借金返済に使わないというのですから、今後も日本国債への高い信頼が維持できると考える(まともな)経済学者はほとんどいないでしょう。

日本国の税収は歳出の半分以下しかなく、毎年借金が増えていきます。2000年には約650兆円だった国の借金は、14年には1000兆円を超えてしまいました。消費税率を10%に引き上げたとしても焼け石に水で、このままでは債務はとめどもなく膨張してしまうでしょう。

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それに加えて、「金融緩和に効果がないなら政府債務をさらに拡大して無理矢理インフレにしろ」という、マッドサイエンティストのような主張をする学者も出てきました。私たちはいまだに、いつ日本国の財政が行き詰まり、国債が暴落し急速な円安が進むかわからない崖っぷちの狭い道をおそるおそる歩んでいるのです。